Epinefrina

海街diaryのEpinefrinaのレビュー・感想・評価

海街diary(2015年製作の映画)
3.5
現在日本人監督最高の一人、是枝監督を以ってしても吉田秋生が作り出す原作の世界観・空気感・リズム感・テンポなどを表現しきれなかったなぁという印象で、改めて漫画を原作にした映像作品の難しさを感じた

時間的制限があるので仕方ないとはいえ、設定・脚本の削減による物語の希釈感が強い
漫画ならではの空気感・間・テンポ感が素晴らしい作品の映像化の難しさを攻めるのは酷だが、原作がかなり良い作品なだけに、その良さが伝え切れていない感は原作ファン、吉田秋生ファンとしては切ない

配役に関しては東宝縛りがある中では良かったと思う

シャチ姐役の綾瀬はるかは、正直最初は彼女の元来の気質を考慮すると余り期待していなかったのだが、改めて素晴らしい演技だったし素晴らしい役者さんだなと感じた
ただ、如何せん彼女自身が元来持ち合わせた気質と役柄が正反対過ぎて、無理してしっかり者をしている感が出過ぎてしまっている
原作のシャチ姐は生粋の、若しくは長年掛けて培われ、それを周りに悟られるようなスキを見せないしっかり者
真木よう子、水川あさみ、柴咲コウ、井上真央などのキツめの気質を演じれる役者、または演技の鬼・オールラウンダー満島ひかり辺りの方がより原作のシャチ姐のイメージに近かったか

よしの役の長澤まさみは非常に良かった
東宝の姫として大事に大事に扱われて来たが、いきなり最初のシーンで半裸姿を晒す・ガサツさ全開の役柄を見事に演じ切るなど一皮剥けた演技だったように思う
今迄良くも悪くもなんとも思わなかった女優さんであったが、今までの経験に加え、貰える配役の役柄と彼女自身の気質の合致、彼女にとって女性としてより良い時期が重なったのか役者として非常に魅力的だった

千佳役の夏帆は逆に可哀想だったなと
原作の千佳は大雑把に言うと4姉妹の中の3枚目役なので美人な夏帆が演じると如何しても違和感があるし、原作通りの演出が難しくなってしまう
ただその中でも美人な千佳役として、固く重くなりそうな物語全体に「抜け感」を醸し出すとても重要な役柄を見事に勤めたと思う

すず役の広瀬すずに関してはこれはもう是枝監督の演出・演技指導の賜物
演技経験はさほど無いと思われるが、素人目に演技で引っかかる部分、目に付く部分が無く、物語の中にスムーズに溶け込み・動かしていた

脇を固める、大竹しのぶ、風吹ジュン、樹木希林、加瀬亮辺りはもう流石のクオリティで彼らの質が映画全体の質を上げている
ただ、堤真一は吉田作品の特徴である気品溢れる男性では無かったのでこの辺はもう少し気品ほとばしる、斎藤工とか向井理辺りの方が良かったかな?(笑)
リリー・フランキーも外見は原作通りでほぼ完璧なのだが、如何せん下手な関西弁を喋らした分興醒め
そこは無理に原作に合わせて関西弁にしなくてもリリー・フランキーの故郷の方言でも良かったのになという印象
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