ALABAMA

海街diaryのALABAMAのネタバレレビュー・内容・結末

海街diary(2015年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

東宝・ギャガ共同配給。是枝裕和監督最新作。カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作。
鎌倉で暮らす三姉妹には腹違いの妹がいた。家を出た父の葬式を機に始まった四姉妹での共同生活。近いようで遠く感じる距離感の中、腹違いの妹である四女すずと三姉妹は次第に打ち解けて家族になっていく。
この映画を観終わった時に久々に何も言えなくなる感覚になった。原因は色々あるが、確実に伝わった。四季の移ろいの中、四姉妹の変化、その変化を受け入れ成熟していく様子を細やかに描いている。様々な「変化」の映画。変化を受け入れることはとても勇気のいることだが、その変化を自分なりに受け入れる事によって人は成長する、自分から変わろうとするのではなく、周囲からもたらされる変化を受け入れる事が成熟だというメッセージが映画から自分に伝わってきた。
また、今作では顔の表情を捉えたショットが多い。最初は、往年の撮影所のようにアイドルやスタアの顔をサービス用に抜いているようなことを今回はしているのかと思いきや、そのショット一つ一つの魂の籠り方が並大抵のものではなく、その全てが美しい。また俳優陣の微妙な表情の変化も見所の一つになっている。
是枝流の演出も健在。随所に台本を排して役者に自由に動いてもらったところを「映した」シーンが鏤められていた。ドキュメンタリー畑で育った是枝監督の最大の強みである台本に縛られない柔軟性はフィクション畑の人からするととても羨ましいだろう。
映画の序盤、すずは三姉妹に対して他人行儀的ではあるが、カマドウマ騒動の瞬間に無意識的に家族であるという意識が芽生える。まさしく、どさくさに紛れてという感じで、この騒動の効果によって観客も無意識的に一体感を共有する事になる。実に見事。観る前はこの四姉妹はあまりにも商業的な意図が見えて、あり得ないのではないだろうかと心配していたが、観終わった後にはこの四姉妹は本当の家族のように見えた。本当に素晴らしい映画。これは興行的にも成功を収めるだろうなあ。
仕事の疲れが溜まっていたが、『海街diary』を観て明日からも仕事を頑張ろうと思えた。近年の日本を含めた色々な国と地域の学生映画を観ていると、現実世界からの脱却や逃避、闘争を描いたものが多く、世界中の若者が新世界を求める気持ちを強く持っていることが分かるが、是枝監督は今ある世界に目を向けてその豊かさを映していくスタンスをとっており、それがよりよい未来へ向けてに繋がる。監督の考えには多く共感出来る部分があるし、願わくば是枝監督の下で学んでから監督になりたいと思う。
明日からも頑張ります。
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