点心

オマールの壁の点心のレビュー・感想・評価

オマールの壁(2013年製作の映画)
4.2
つらい…………。「壁」は自分の猜疑心。

 幼なじみのオマール、アムジャド、タレク。主人公のオマールはタレクのいもうとナディアとプラトニックな恋愛関係にあり、いつか兄のタレクと家族に許しを得て結婚するつもり。

 一方彼らが住んでいるパレスチナ自治区は壁で分断され、イスラエル兵の占領下にあり、オマールが3人に会うためには壁を越えていかなければならない。

 3人はイスラエル兵に攻撃をしかけるが、犯人探しのためにオマールは捕まり、拷問を受け、スパイになるように脅される。刑務所で「こういうやつはスパイだから気を付けろ」と教えてくれた男が自分の声を録音している。誰を信じればいいのか。

 オマールの「壁」は最初はパレスチナを占領するイスラエル兵に向けられていたけど、そのうち幼なじみや恋人を信じられなくなり、信じられないようなことを信じてしまう。

 はっきり本人に聞けばよかったことを聞かなかったばかりに、いちばん大事なものを失う。本当は失っていなかったのに。

 聞きたいことを直接聞けずにかっこよく(自分はそのつもり)で引いてしまうこと、あるかもな。なんかアムジャドは漱石「それから」の僕っぽい。

 3人のイスラエルへの対抗策がまとまった組織に属さずに幼なじみだけでやっているのは、「俺たちは○○だ」って言ってやってくるパレスチナ人が、本当にイスラエルに対抗しているのか、あるいはイスラエル軍のスパイなのかわからないから(だと思う)。パレスチナたちがお互いを疑うことによって、パレスチナ人は大規模な組織に属せないし、少し大きくなってきたらイスラエル軍が叩けばいいので、圧倒的にイスラエル軍のほうが有利。その疲弊した地域のなかで、自爆攻撃がうまれたなら辛すぎる。(これはパラダイスナウを見たほうが良さそう…)しかもパレスチナ問題ってもとは三枚舌外交とか、その場で暮らしていない人たちによって複雑化してるのに、全然回復の見込みがないのも辛すぎる…。。
点心

点心