kokonama

虐殺器官のkokonamaのレビュー・感想・評価

虐殺器官(2015年製作の映画)
4.5
【虐殺には文法がある】

SF作家伊藤計ごの小説を映像化した三部作の内の一作。

アメリカからテロリスト認定されているジョン・ポール。彼は、MITで言語学を学び、その研究の予算が国から下りていたという。国家機密ともいえる彼の研究とは一体何なのか。

めちゃくちゃ濃縮されてる一作です。すんごい濃い。おえっ。

そもそも虐殺器官とは何なのか。

奴隷たちは大陸から拉致され一箇所に集められました。文化背景も言語も違う奴隷たち。奴隷同士のコミュニケーションは、領主の使っている言語を意味もわからず使っていたという。その体系立てられていない言語の中で生まれ育った第二世代は、なんと新たな言語体系を確立したのだった。

これが私たち人間が持つ生得的言語生成機能である。虐殺器官とは、このように我々の中に内在する、虐殺を引き起こさせる器官である。博士は、これを持ちいて貧しい国同士で内戦を殺し合いをさせる。

でも、そんなに虐殺器官を用いての殺し合いは描かれていない。たぶん、描かれているのは、貧しい国と豊かな国との分断。豊かな国の人は、より平和になっていき、貧しい国の人は、より暴力的になっていく。

人間は見たいものしか見ない。ならば、もう2度と愛する家族を殺されないために貧しい人は貧しい人同士殺し合いをさせればいい。こんな動機で博士は、虐殺器官を使うのだ。

面白いテーマ性を持っている映画だと思った。

地獄は頭ん中にある。感情の影響を受けない究極の兵士。エスキモー。カフカ。自由は通貨だ。
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