このレビューはネタバレを含みます
対価を得るために、代償を払う。
希望するものを買うためには、労働によって時間が縛られる。紙幣・通貨での精算は自由であり、デジタル認証精算は不自由。プライバシーの自由を放棄し、監視社会で安全を得る。食糧不足への適応が虐殺発生の火種。
リアルな世界とリンクする無機質なフィクション。『AKIRA』や『攻殻機動隊』から脈々と連なる、近未来SF調日本アニメのアプローチは普遍且つ革新的で尊い。
伊藤計劃さん、初めて知りました。惜しい才能を失くしていたんだなぁ。
ステルス迷彩や世界の裏側にいる権力者たちのイニシアチブの奪い合い等、どことなくメタルギアソリッドを彷彿とさせる着想が素敵。(原作作家氏は小島信者だったとの事。やはり。)
ただ、腹落ちしなかった描写も幾つかあった。特にクライマックス、ラストにかけて釈然としない。物語の根幹となる部分がふんわりしているように感じました。
以下へ疑問点を列挙。
・感情を制御されているクラヴィスは、何故ルツィアに対して情熱を持ち、激しく固執したのか?
・ジョンポールの動機となる、悪と悪?を戦わせておけば自分の守りたい世界は守られる。っつー理屈がよく分からなかった。
戦地が中東やアフリカ・東南アジアであれば、ジョンポールが守りたい世界である欧米諸国(欧米に住む家族・恋人)には害が及ばないってこと??そんな馬鹿な話があるか。
・そもそもジョンポールはどのようにして大量虐殺を引き起こしていたのか?
文法が存在するのはわかるけど、どのような言葉を操り誘導することで、虐殺を起こす思考回路へと陥らせるのかがイマイチわからない。
・ラスト、クラヴィスは虐殺の真相を告発して一体どうしようというのだろう。告発によって、世界は真実を知って何が変わる?何が起きる?
告発はクラヴィスの自己満足に過ぎず、世界は何も変わらない気がするのだが…。