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虐殺器官のNARUのレビュー・感想・評価

虐殺器官(2015年製作の映画)
3.5
世界各地で虐殺を引き起こしている《ジョン・ポール》の暗殺を命じらた男の話。

原作にある多数の要素の中から「虐殺器官とは」というテーマだけを抽出し、ダイジェスト的に描いた映画化だった。

原作では多くのページを割いていた「主人公を縛りつける母の記憶と罪の意識、およびその葛藤」が完全に排除され、
「死者とは何か」「自由とは何か」といったテーマも割愛されている。

要素が整理されたとはいえ、それでも難解な作品だ。
それは原作が難解だからで、本作の脚本や、視聴者の読解力が問題だからではない。

なぜなら、この作品は「主人公たちはジョン・ポールの虐殺を止められるか?」というエンタメではなく、虐殺を企てる人物を通して、前述したテーマを浮き彫りにする文学だからだ。

つまり「約2時間の映画に収めるとこうなるよな」という内容だったので、気になった人はぜひ原作を読んでほしい。

あるいは、原作の元ネタの一つであり、「殺人を扇動するキャラクター」の怖さを描いた映画『CURE』を勧めたい。
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