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虐殺器官のぐりんでるのレビュー・感想・評価

虐殺器官(2015年製作の映画)
4.2
9・11のテロを経て先進国の在り方は変わった。ある程度のプライバシーを犠牲に監視されることで平和を確立した社会🙂🙃

その一方で途上国で多発する内戦、虐殺。それを引き起こしているのはある一人の男…通称、虐殺の王…その男の企てを阻止すべく米国特殊部隊が動き始める…

原作小説を結構きちんとまとめてると思う。ただ知っているから自分は楽しめたけれど、結末に向けてが割と不親切な気がする。この映画だけでは、主人公の行動原理がわかりづらそう🙄

母親のエピソードを完全に省いたのも影響してるし、主人公は劇中で文学や言語に長けた描写は多分に描かれてはいるけど、”言葉”に対して特別な意味・価値観を持っているなどなど心理描写がずべて省かれていて、いろいろ含めて非常に惜しい!

それでも、この映画を見ると非常に頭が良くなった気分になる。なぜなら劇中で繰り広げられる会話のほとんどが小難しい熟語や表現のオンパレード、そして文学の引用の応酬

この辺は退屈な人には退屈だと思う。戦場での銃撃・殺人など描写も結構生々しいのでグロテスクが苦手な人にもきついと思う。

この作品の魅力といえば、言葉の引力。言葉の奥深さを独特な解釈で紐解いてるのが面白かった

人間の思考は言葉によって規定されるのか。
言葉で誰かを喜ばすことも、傷つけることもできる。あるいは言葉により人を殺すこともできる。そういう言葉の操作は人間の心、精神性に左右されるものかと思えるがそれだけじゃないんだって!

そもそも人間における言葉とは概念的なものではない。確かにそこに存在している。

人間は言語を学習によって身につけているだけではない。ある要素を組み合わせて文を生成する仕組みを持っている🧠それは人間の進化の過程における生存適応の産物。キリンの首、ゾウの鼻のような。器官と言ってもいいもので言葉を生み出す機能🧠生得的文生成機能と言うらしい。

そして言葉とは、同時に音でもある。

あらゆる文明や技術の進歩はあれど、人間に強く影響を及ぼすものは太古の昔から音だった。音は視覚と異なり魂に直に触れてくる。音は意味をバイパスし、心を犯す…

こういう意識ではどうにもならない領域、体に刻まれた遺伝子コードの中には人間の「良心」という価値判断基準に蓋をする仕組みが存在している

それは人間の生存本能のための機能。潜在意識を再構築してしまう深層文法を解除コードとして発動するそれが「虐殺器官」


人は見たいものしか見ないようにできている。特にITの進歩はそれを助長している。
その目に映るもの、受け入れている現実は本当に真実なのか?

ある自由を放棄して、別の自由を得る。自由とは選択の問題なのだ。絶対的に純粋な自由などは存在しない🙂🙃

ある程度の自由を犠牲に得た自由。それは自分の意志で選択したものなか

人間の行動、心、遺伝子そこに潜むパターンを読み解かれれば大衆は同じ方向を向き、古の力からは逃れることはできない。

虐殺の王は、なぜ各地で内戦虐殺の手引きをするのか…




とにかくこれは原作が面白い。よくこんな話が思いつくなと感心するばかり。
映画と小説双方で理解が深まった感じがする
長々書いたけれど、言葉ってすごい!そして人間の本能はやばい!というのを面白い角度から掘り下げた作品。

こんなインテリ映画を見てしまった日には俺の知性も溢れ出す🧐
本の引用ってのは、博識具合をえらい高めるね。俺も今度から会話で本の言葉を引用しよう。

かいけつゾロリとかから。

耳には瞼がない。俺の言葉を阻むことは誰にもできない

言葉で人を誘導できるのなら、人が喜ぶ言葉を送ろう。
利他精神を持ってね。

難しい言葉つかって疲れたわい