イチロヲ

花芯の刺青 熟れた壷のイチロヲのレビュー・感想・評価

花芯の刺青 熟れた壷(1975年製作の映画)
5.0
京都で人形創作に勤しんでいる未亡人(谷ナオミ)が、過去に自分を犯した歌舞伎役者の長男(中丸信)と遭遇してしまう。劣情に翻弄される女の生き様を描いている、日活ロマンポルノ。花柳幼舟(舞踊)と凡天太郎(刺青)が、製作に関わっている。

本作の主人公は、歌舞伎役者に憧憬の念を抱きつつも、舞台から降りたときの「役者のリアル」を抑圧させている女性。主人公のトランス状態を察知する娘(北川たか子)と、自己変容に棹さしてくる刺青師(蟹江敬三)が重要人物となる。

「歌舞伎役者はDNAレベルでプレイボーイ気質が擦り込まれている」を根底にしながら、虚実不明瞭に陥るドラマを「安珍・清姫伝説」と重ね合わせていく。溝口健二レベルの高尚な作品と錯覚するほどの、たおやかな雰囲気に満ち溢れている。

人生初の墨入れから、第2形態に変身して狂喜乱舞するまでのくだりは、まさに谷ナオミの真骨頂。薄幸のヒロインと最強のラスボスを合わせ鏡のように演じきっており、まさに谷ナオミは「谷ナオミ」という発明品であることが理解できる。
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