不在

狩人の不在のレビュー・感想・評価

狩人(1977年製作の映画)
3.8
1976年12月31日、狩人の一行がその日の狩りを終えて帰路につく最中、とある男性の死体を発見する。
その遺体はギリシャ内戦時、左派の叛徒、レジスタンスとして右派と争ったゲリラ兵のものであり、たった今事切れたばかりのようだ。
しかし内戦などとうの昔に終わっている。
疑問を抱きつつも、狩人たちはその死体を自分らが宿泊している館に運ぶことに。
そして呼び出した憲兵隊からの尋問を受けていく中で、狩人たちの本当の姿が明らかになっていく。
彼らはみな、形はどうあれ内戦における勝利者だった。
獲物を狩る側だったのだ。
そんな狩人たちがひとつの死体をきっかけに狩られる側、歴史の獲物となっていく。

よくよく考えると冒頭で狩りを終えた彼らの手には、何も握られていない。
ブリューゲルによる『雪中の狩人』のように、彼らは手ぶらで宿へ帰るつもりだったのだ。
今となっては獲物が獲れようと獲れまいと、どうだっていいことだ。
戦いは終わり、自分たちは勝利した。
勝った者だけに許される恩恵、戦争の甘い蜜を数十年間吸い続けてきた狩人たちを、裁く者はもういない。
しかし彼らは死体を見つけてしまう。
最後の審判の時が、遂に訪れるのだった。
不在

不在