【何のために投げるのか?】
劇場でみ逃しDVDで。ディズニー感動商品として、外面は手堅い仕上がり。私は少し歪に感じましたが。
前半、主人公JBが、窮地を脱する道具として、純朴なインド青年を利用する段の方がむしろ説得力があったし、その2人、リンクとディネシュを記号のように描くことにも意味を感じました。が、そこからどこまで「成長」が描かれたかがちょっと…。
一番引っかかったのは、リンクとディネシュの、野球への本気度が最後までわからないことですね。
境遇を変えたいという意志は、特にディネシュには感じましたが、メジャーリーガーになるには、野球に対する強固な意志は最低限必要でしょう。野球は楽しむものだ!が結論ぽくなっちゃってるけどあまりにスイーツではないかと。
元ただのオバサンだった、ある女性歌手の成功物語とを「ザッピング」する始まりは端的で巧かったですが、歌手になりたかった彼女とインドの2人は根本的に違うわけで、それをJBが気づかないことはいいのですが、映画としてはもっと、2人をケアしてほしかったです。
実際、本作後の2人がどうなったかある程度知っていますが、駆け足で入団テストを受けさせたことがよかったのかどうか、これだと首を傾げてしまった。また終盤、あれだけダメだった2人を2週間であそこまでどうやって仕上げたのでしょう?
全般、プロ野球視点からの、現実的なディテールが立ってこないので、ファンタジーに近く感じてしまいます。
野球に対するJBの立場は、映画『打撃王』をみてのリアクションに出ていたし、彼がどんな人物かはよく伝わりました。ジョン・ハムの嫌みのない演技もよかった。
が、JBって毎度失敗してから気づく鈍感屋で、インドで言われた「2人の人生を変えてしまう責任」を、どこまで感じられるようになったかは疑問に思います。
意地悪な見方をすれば、制作者は映画のネタとしてこの出来事を欲しかっただけなのか、という気がした。実話から気持ちよくなれるところだけ切り出して見せる映画商法は、私はさすがに、飽きてきたのです。
細部の面白い描写は時々光っていました。
いかにもアメリカ人、らしき視点から描かれるインドの面倒くささは定番だけど面白かったし、インドにまるで興味のないJBがぼやく、タージ・マハルの感想には爆笑しました。
あと、アラン・アーキンはめっちゃオイシイ役でしたね。
その他いろいろ感ずるものありましたが、このへんで。
<2015.3.18記>