タミキーリ

ミリオンダラー・アームのタミキーリのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・アーム(2014年製作の映画)
4.0
J.B.バーンスタイン本人の著書原作読了済み。
実は原作は中盤まであまり面白くなかった。
というのも「以前の暮らしぶり」の描写があまりにも鼻に付く感じで、ちっとも好感が持てなかった訳で。
本人が書いているからか、文章にちょっと自慢げなところが
出て来ちゃってるわけ。

ところが、映画になってみると彼の周辺の設定を大きく変更。
「独立が上手くいってなくて、後が無い崖っぷちな状態」
これによって、バーンスタイン本人も応援しようという気持ちに簡単になってしまう。脚本上手すぎる(笑)
ちなみに、当時のバーンスタイン本人は、
4人の大物クライアントを抱えていて、その世界では成功している人。

インドで散々な目にあいながらも(実際はいろいろと悩まされたみたいだけど、かなりここは省略されてた)、
期待できる2人を連れてアメリカへ。
本当は、もう一人最年少の青年がいたみたいだが、
スラム育ちで身分を証明するものがなく、
インドから出る事ができなかったとのこと。
バーンスタインは、彼の事にも何度か触れているので、
相当に残念だったのだと思う。

そのアメリカへやって来た二人のインド人、リンクとディネシュ。
この二人の元々持っていた素質が真面目だということ、
そして、短期間の間に全くの素人からプロへのテストを
受けられるまでになる程の練習に対する熱心さが、
映画では少なかったように感じる。
特に、女の子と話すなんてことは全くなかったような状態なので、映画の中でブレンダと会話しているのを見て驚いてしまった(笑)

また、バーンスタインの設定を崖っぷち状態にしたことにより、リンクとディネシュがバリー・ボンズの邸宅に招待されて
「ホテルに住んでいるのか」と驚くといったエピソードはなくなっていた。(あったら面白かったのに)

多少あっさり気味ではあるものの、原作にはなかった
二度目のテストでのアミトの激励などは予想外にぐっと来るものがあり、テストの結果を知っててもハラハラした。
また、これはインド人二人のサクセスストーリーだけではなく、一人の男が生まれ変わっていく様子も描かれていて、
映画ではどちらかというと後者の方が強い印象。

ところで映画を観ている間、通訳のアミトの名前だけ何か引っかかってたのは、彼だけ実在の人物と名前が違ったからだ。
(理由は不明、ディーペッシュ・ソランキという人物が、
アミトの役にあたる人)

映画は彼ら二人が二度目のテストで投げ切った後、
暗転して、実際のリンクとディネシュのその後の活躍映像が流れていたので、彼らがあのあとどうなったのかは映像の通り。

ディネシュはその後2010年にパイレーツを解雇され、
インドへ戻っている。
今回の映画においては、スラージとマドゥールに投げ方を教えたりしていたそうだ。
リンクはといえば、原作の巻末にあった写真を見ると、
かなり大柄に成長していて、胸には大きなタトゥを入れているので驚く。

リンク役は、「ライフ・オブ・パイ」のスラージ・シャルマ。
スラージは右利きなので、サウスポーなリンク役を演じる際、
左右逆の衣装を着て右利きで投げた映像を編集の時に裏返したのだとか。もちろんバックの文字なども逆だったそうで。

レイ・ポイトヴィントを演じた、アラン・アーキン。
殆ど寝てるシーンばっかりだったけど、
それでもオイシイとこを持って行くのは流石だった。