うだつの上がらない35歳の漫画家アシスタントで、突如起こった謎の感染症によるゾンビ・パンデミックで恋人を失っても尚煮えきらない鈴木英雄。パニックに陥った街を逃走中に女子高生の早狩比呂美や看護士の小田つぐみと出会った彼が、趣味が功を奏して手にする散弾銃を頼りに崩壊する日常で生き抜こうとする姿を描くゾンビ映画です。
花沢建吾の人気漫画を佐藤信介監督が実写化した作品で、邦画離れしたリアリティと独創性の両方を兼ね備えたスリリングなゾンビ描写によって壊れゆく平凡な日常を描いていて、観客を引き込む力強さがあります。『ヒーロー』を冠する物語でありながらそれにはそぐわない現代人らしい妄想力にばかりに秀でた主人公というのが日本的です。
自らヒーローとうそぶき、比呂美から二人ともヒーローだと諭され、迫り来るゾンビ達に追い掛け回されても、なかなか立ち上がろうとしない彼には現実の自分を棚に上げてイライラを募らせますが、だからこそいよいよ立ち上がった瞬間には奮い立たせるカタルシスがあります。世界に出しても恥ずかしくない、誇れる日本産ゾンビ映画です。
