月うさぎ

シェフ 三ツ星フードトラック始めましたの月うさぎのレビュー・感想・評価

4.0
好きな仕事をしている時の男って本当に魅力的。

三つ星フレンチ・レストランのシェフ、カール・キャスパーはオーナーとの意見の違いから解雇された。再出発はなんとフードトラックでサンドイッチを売るというアイディア。10歳の息子と共にマイアミ~ニュー・オリンズ~オースティン~ロサンゼルスまでの旅をする一夏の物語。
ストーリーは以上の通り。

ロードムービーで美味しい料理とご機嫌なラテン系音楽と可愛い子役と二人の美女とくれば、ウケる要素盛り盛りだよね。

ジョン・ファヴロー監督は、脚本も手がけ、低予算のインディペンデント系を制作、主演も務めました。
彼自身の想いの込められた作品です。
ハリウッド大作を成功させた達成感と仕事の満足感とのバランスが崩れる時、本当の自分の気持ちを見つめた時。真の悦びとは何なのか?誰の笑顔のために自分は作品を(この映画では料理を)作るのか?
贅沢なフレンチは腕を振るうチャンスであり、創作欲の表現としても適しています。
しかしご当地B級グルメにもシンプルに人の心を掴む力があります。
そしてそんなソウルフードは一回切り味わった高級料理よりも深く愛され続けることも多いのです。
誰しもそんな映画を心に抱いているでしょう

元恋人で同僚(フロア・マネージャー)のモリー役でスカーレット・ヨハンソン、ロバート・ダウニー・Jrも友情出演。
スカーレット・ヨハンソンが黒髪なので、誰?この美しくてカッコいい人は?と思ってしまいました。
彼女の存在やカールへの助言や勇気づける言葉も実に素敵。信頼感に溢れています。
元妻イネスにソフィア・ベルガラ。彼女がまた愛情たっぷりなラテン系美女。離婚しても友達としてフランクな付き合いができていて、彼のことを親身に思っている事が伝わってきます。
息子もパパが大好きで、もっと一緒にいたい。シェフの仕事にも興味深々。

あり得ないほど幸せな男だよ!カールは!
 
ファヴローさん、役得だねー!って思うでしょう?でも濡れ場無しってところがまた可愛いんだなぁ。

暴言で中傷した有名ブロガーに直接苦情を言うシーンの迫力。
彼が職を辞す事で部下が昇進することになり、シェフについて店をでなかった事に後ろめたさを感じる元部下を、決して責める事なく、自分のキャリアを大事にすべきと勇気づけるシーン。
共に、仕事仲間を想う気持ちが吐露されています。
料理も映画もリーダーとチームが力を合わせて作り上げるものなのです。

こういう全てはファヴロー氏の人柄を反映させるものだろうと思いました。
いい役者が揃った事もね。


SNSは使い方によって敵にも味方にもなる
現代のアメリカ映画でSNSを無視する事はできない様です。
このツールを使いこなす息子のパーシーという存在によってストーリーにも父と子の関係性にも新たな展開を与えていて、わざとらしさのかけらもないところが上手い。これまでSNSの影響を扱った映画はいくつもありましたが、本作が一番適切に使っている。悪い面もいい面も。世代の温度差も。


映画のセリフではないけれど、この名言を残したかったファヴローの気持ち、わかるし好きだなぁ❤️
 ↓
「これだけに集中するんだ。世界にこのサンドしか存在しない。失敗したら世界が終わると思え」

アル・グリーンのTired of Being Alone
大道芸で使われていたこの曲を聴いている時のカールの表情

ワイルド・マグノリアスのBrother John Is Gone / Herc-Jolly-John
ニューオリンズの場面で

ピート・ロドリゲスのI Like It (I Like It Like That)

全編テーマが統一された印象的な音楽の使い方が好き。
重要な会話のシーンでは音楽を流さない演出もとても好ましいです。
月うさぎ

月うさぎ