いっちー

シェフ 三ツ星フードトラック始めましたのいっちーのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

「君は僕の憧れだったのに」
批評家のこの一言で、全て持っていかれた。
批評家もプロで、たとえ相手を傷つけることになったとしても、それは自分と読者への誠実さということかもしれないし、
今回は期待の裏返しだった。
もともと彼にはシェフへのリスペクトがあって、シェフも冷静に話をして和解できたのは本当に幸せなこと。

最初から、思い通りにメニューを変えられなかったことを伝えられていたら…とは思うけど。

やっぱり、批評家という仕事は、結構残酷な仕事だと思う。
何かを讃えるということは何かを下げるということだから。

ただ、ブログを売って、シェフに提案する前から箱を買ってたのはすごすぎる。リスク取りすぎ。

そういえばオーナーの対応はSNS OKな振る舞いだったな(笑)Twitter上では保守の勝利。


Twitterに対するの描写には全体的に時代の古さを感じてしまった、
普段、SNS上での発言や振る舞いを無意識のうちに制御しているんだなと、冒頭のシェフのツイートにイライラしながら気づいた。

結果的に息子のおかげでTwitterの恩恵にあずかれた、
話題になっているから影響力はすでに獲得しているし。
そういう意味では全然どん底ではなかった。キャンセルカルチャーを経験している今の時代ではこんなに甘くないって思って見てしまう。
いや、シェフはキャンセルされるほど悪いことはしてないか。

映画公開が2014年。10年後にはTwitterではなくなっているとは誰も思っていない。


息子との関係性も、あまり共感できなかった。根本がギャグ系であまりシリアスな人間関係を描かないからだけど、そもそも元妻との関係も元夫の人柄も謎すぎる。ついでにいうと最後に再婚しとるのも理由が分からなすぎる。全体的にストーリーは予定調和的で「こういうなってほしいんだろうな」の結果のハッピーエンドで納得ではあるが。

息子の発言内容にも「こう言ってほしいんだろうな」という作者の意図を感じた。
誇りを持って働く姿の父親像と、時々バカをやる1人の男性としての父親像。確かに10歳のトニーには必要な時間だったのかもしれない。


一番すごいのはマイアミについてきたマーティン。
給料が出ないのに仕事をやめてマイアミに飛んで、スペイン語が話せて一晩で塗装ができる友達がいて、トラックを運転できて料理もうまい。控えめに最強人材すぎる笑
シェフが干された時のBARでのコメントは皮肉なのか心からの労いなのかわからなかったけど、行動が本気を物語っていた。


シェフは急に何もかもを失ったように見えて、確固たる料理の腕があり、ついてきてくれる仲間がいて、影響力もある。料理の腕が一番重要な要素で、そこに注目を活かせる環境が合わさったらこの物語は決して夢物語ではないだろうなと。最後に店のオーナーがこんな形で現れるのはさすがにフィクションだけど。
いっちー

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