Aix

THUNDERのAixのレビュー・感想・評価

THUNDER(1982年製作の映画)
3.9
ベルリン国際映画祭に招待された伊藤高志の実験映画。深夜の大学の壁に女の顔が現れる話。

死ぬほど面白くて格好良い完璧な芸術映画。今作は刺激的で斬新なストップモーションの撮影に加え、照明、音響、ロケーションの使い方にもこだわりが感じられて素晴らしいです。目や耳など人間の体から吸収出来るあらゆる情報が美しかったし、強く頭に残りました。感覚としてはギャスパーノエとかニコラスウィンディングレフンとかノーマンマクラレンに近い雰囲気だったけど、そういった監督たちと比較しても今作は実験映画の範疇に収めていたのが良かったです。ストーリー性の無さで評価をマイナスにしている人も結構見かけましたが、むしろ物語を説明していないからこそ、美しいビジュアルを引き立てて、鑑賞後もしばらく今作のことを考えたくなるんだと思いました。タルコフスキーの惑星ソラリス、クリスマルケルのラジュテ、アランロブグリエの去年マリエンバートで、ベルイマンの第七の封印を初めて見た時のような、観客を映画の中に吸い込む力が今作に宿されていたのは間違いなく映像の賜物です。

伊藤高志の作品を見るのは今作が初めてだけど、こんなに面白い実験映画を撮れる人が日本にいるなんて衝撃的でした。他の作品をチェックするのがとても楽しみです。
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