円柱野郎

味園ユニバースの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

味園ユニバース(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

関ジャニ∞の渋谷すばるが主演ということで、分類的にはアイドル映画にもなるのだろうけれど、そこはそれ作家性のある山下敦弘監督の作品。
人間と空気感が良く伝わる作品になっているなと思ったし、素直に楽しめたね。
二階堂ふみは沖縄出身ということだけど、劇中の関西弁は違和感がなかった。
タイトルであるユニバース(大阪千日前)界隈を舞台にした大阪の超ローカルな世界観の話のせいか、実際は全然話が違うのに「じゃりン子チエ」と同じようなニオイを感じたのは、なんか不思議。
ただよう昭和臭というか。
でもそういう「大阪ならあるんかも」と思わせる様な、ある種ファンタジックな人情物語が個人的には心地よかったな。

「あれだけ殴られたら死ぬで」とか思わせる様なとこからして、リアリティよりは空気を感じさせる作品だとは思う。
なので作品の決定的な部分で段取りをすっ飛ばしているのだけども、「もう勢いで観てしまってええか」と思っちゃうんだよなあ。
細かいことを言えば、終盤に茂雄(渋谷すばる)が罠にはまるシーンで、カスミ(二階堂ふみ)がその場所が分かったのか説明が全然ないし、その後カスミがどうやってあの場を治めたのかも不明なんだけどね。

でももうそこはもういい、行間はこっちで勝手に考えとくわ。
そんなのはラストに茂雄が「ココロオドレバ」と熱唱しているシーンで全部吹き飛んでしまったし。
記憶喪失のポチ男だった時は突っ立ったままだった歌い方が、ラストでは全身を使って歌ってる。
ただそれだけの違いがカタルシス。
茂雄のこれまでが終わり、これからが始まるんだというその歌の使い方と表情、そしてそれは茂雄に出会ったカスミも同じなんだという見せ方が良いよ。

ポチ男が参加するバンドは、実在する赤犬というバンド。
本人たちが本人を演じるいわば"HIMSELF"なわけだけど、この人らがまた味があって、散々な目にあってるボーカルの扱いも面白かったなあ。
赤犬は山下監督の大学の先輩だそうで、そういう意味でも描くに思い入れがあるんだろうなというのがよく分かる。

この映画は渋谷すばると二階堂ふみが主役。
でも赤犬もまたこの世界観の重要な要素であるし、もちろん味園ビルやユニバースがある大阪という空気感そのものが主役。
円柱野郎

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