shibamike

クワイヤボーイズのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

クワイヤボーイズ(1977年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

柴三毛「"炉端猿鳥血(ろばたさるとりち)"の映画?」

江戸時代、不治の病に冒された殿様がいた。国中の医師達が匙を投げる中、古くからの言い伝えである"秘伝の万能薬"が最後の望みに。万能薬の作り方は猿と鳥の生き血をかき混ぜ、炉端で温めれば完成で、早速殿様に服用させる家臣達。殿様の運命やいかに…!

みたいな映画かと思ったら、そうではなく、「"ロバート・アルドリッチ"の映画」であった。しかもタイトル「クワイヤボーイズ」だし。


ロサンゼルス市警?の日常が描かれる。
ユーモアはバンバン下品なのが飛び出すし、一般市民もバンバン死ぬし、取り扱う犯罪も殺人とかの凶悪犯罪ではなく、売春とか飛び降り自殺とかSMクラブ摘発とか変テコなものばかりで強烈さを感じた。ユーモアは案外笑えたので良かった。

主人公?の警官ウェーレンを演じている俳優が映画「合衆国最後の日」の大統領役だった人で、役者って色んな顔になるなぁと面白かった。

一筋縄ではいかないクセのある警官しか登場しないのであるが、そんな中でもロスコーという警官は特にヤバい。極度の癇癪持ちで、3秒あればマジ切れするような瞬間湯沸し器。警官の職務である"市民の平和を守る・維持する"の真逆を突き進むかのようにトラブルしか引き起こさない。飛び降り自殺寸前の少女説得のシーンでは説得に応じない少女にしびれを切らし「死ぬ勇気ないんだろ!飛び降りるんだったらさっさと飛び降りろ!」と言い放ち、少女はロスコーをなんとも言えない表情で見て、そのまま飛び降りた。「…まぁ仕方ない。」とロスコー。おい!
劇場内に何とも言えない寂しい笑い声が響いた。

ベトナム戦争の後遺症でマゾヒストになってしまい、SMクラブの常連になってしまったイケメン警官のバクスター。同僚のサムにそのことを知られてしまい、翌日に拳銃自殺。マゾヒストがばれたどうこうよりもベトナム戦争の後遺症で神経が限界だったのであらう。というかSMクラブくらいいいじゃん!

終盤は閉所恐怖症かなんかでベトナム戦争の記憶がフラッシュバックしてパニックになったサムが一般市民を射殺してしまい、それを警官みんなで庇うという「それいいの?」という展開。さすがに事件は隠しきれず多くの警官が謹慎やらの処罰を受ける。
が、最後の最後でウェーレンが副総督を巧みにやり込めて、警官みんな復職になり、ウェーレン達の爆笑で映画は終わる。なんか警官の身内意識の強さが感じられて自分は好ましく思えなかった。が、世間から疎ましく思われがちの警察というのは同僚同士身内で肩を寄せ合わせずにいられないのかも、と思うと複雑。

ユーモアとかギャグが過激なのも、悲惨な事件を目の当たりにしすぎて、そのショックを中和するためなのかもしれない。ウェーレンの台詞で「警官の資格はユーモアと…(あとは失念)」とユーモアを重視しているものがあった。笑い飛ばす気概が必要なのであらう。

残り半年で定年を迎えるベテラン警官ウェーレンは嫌味な上司達から攻撃を受ける時に必ず「年金」の話を持ち出される。
「これ以上たてつくなら、お前に年金は支給されないようにしてやるぞ!」とかそういった脅しを上司達はウェーレンに言う。
とりあえず仕方なく働いているサラリーマンが会社勤めを我慢している理由の一つに「年金支給」があると思う(ボーナスとかもそうかも)。ここいらを「んなもんいるか!ボケ!」と強がることができれば、日本からブラック企業や過労死などの問題は劇的に減ると思う。が、やはり老後に人並みの暮らしをしたいと思うのがやはり人情であり、勤め人の辛い所であるよなぁと思った。
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