Yuichi

百円の恋のYuichiのネタバレレビュー・内容・結末

百円の恋(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

オチが。。。。オチが違ったら、最高の映画になっていたかもしれない。なぜ、男に手を引かれてついていくような描写をしたのか。

世の中には、女性が恋愛によって、男性によって、磨かれて、輝いていく。といった、あまりにも男性発信の男性のための、男性の気持ちよくなるような考え方が浸透してしまっている。

そして,女性が立ち上がる時に、その影に男がいるのかどうなを多くの人が気にする。男性が立ち上がる時に、その影に女性がいることは気にしないのに。

この映画もその文脈で捉えることもできるし、監督,脚本の意図も,そこにあるのかもしれない。おそらくそうだから、あの結末になってしまうのだろう。

主人公のイチコは、自堕落な生活からバイトを始めて、そのうちにボクシングをはじめ,本気でのめり込んでいく。この流れを、男の出会い、別れを原因に設定して、男がいたから、女が変わったという解釈を、個人的には抗いたい。

イチコは、ボクシングに出会い、ボクシングの友情、精神に魅せられて、その世界に深入りしていく。そして、試合をしたいとは、本気で相手にぶつかり、相手を認めること、人間関係を開きたいという思いである。

その横には、元ボクサーとの出会いや、レイプ(この描写は本当に必要だったのか?)というものが描かれ、男の力を感じさせるが、そんなものなくても、十分に楽しめる映画である。

百円の恋というよりも、百円の拳であり、百円の生き様であり、リングだった。

その女性が立ち上がり、自分の目標に自分一人で(トレーナーなどの支えはあるものの)向かっていく様子。その美しさこそが、この映画の軸である。

だからこそ、負けて悔しくて泣くところに、男の姿はいらないし、来たとしても振り払うイチコであったはずだ。少なくとも、泣きながら男の手に引っ張られるのを自分に許すような人間ではない。

だからこそ、あのリングで交えた拳。顔が腫れながらも繰り出した左、そして、讃えあう試合後の2人、がより美しくなるのだ。
Yuichi

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