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プリンス ~英国王室 もうひとつの秘密~のtaruponのレビュー・感想・評価

4.0
英国王のスピーチのジョージ6世の末弟であるジョン王子、自閉症、てんかんの持病があったため隠されて育てられ13歳で夭折した彼と、彼のすぐ上の兄で仲が良かったジョージ王子(ちなみにジョージ6世は次男でアルバートとよばれており、こちらは四男で大人になってケント公とよばれた人物)を主軸に、第一次世界大戦、ロシア革命等が背景として描かれている。
もともとは、日本で言う二夜連続のスペシャルドラマを一つにまとめたもの。トータル3時間の長尺だが、ていねいに作られた佳作だと感じる。

ジョン王子は、病気ゆえ隔離され制限されることも多いけれど、好きな庭づくりを行い乳母のララの尽力もあって好きな音楽に触れ、ある種の自由さがある。一方、普通に育つジョージ王子、ロイヤルファミリーの中でないがしろにされていく弟をかばい、周りで繰り広げられる大人達の政治のやりとりを冷めた目で見つめ、海軍士官学校の中でその在り方にいろいろ疑問を持つも、王子としての役割から逃れることはできない。どちらが自由なのか、何が幸せなのか一概には言えないが、兄の退位による予期しない即位により吃音克服に苦労したジョージ6世を含めロイヤルファミリーという存在の窮屈さ、義務と責任を感じる。

両親のジョン王子に対する対応については、現代の感覚でいえば冷たすぎてありえない感もあるだろうけれど、当時の貴族や王家としては障害や病気に対する戸惑いも含めあんなもんなんだろうなと感じるし、だからこそ乳母のララの献身やジョージ王子の温かさに心を打たれる。
また、ジョン王子の絵、音楽等、現代だったらその才能を評価される部分もあるのだろうけれど当時はまだまだ理解がなかったのだろうなと思う。
ジョン、ララ、ジョージ、そして王妃とそれぞれの立場や気持ちが重層的に重なって感じられ興味深い作品となっていた。

また、祖父エドワード7世の葬儀でヨーロッパ各国の王族が親戚として参列するシーン、ロシア革命の中、親戚のロシア皇帝一家が革命政府により射殺されること、第一次世界大戦中敵国のドイツ由来のサウス=コバーグ・アンド・ゴータ朝からの改名を決断するところ等ヨーロッパの王室が国境を越えていかに親戚として結びついていたのかを改めて感じたし、第一次世界大戦の見え方もいわゆる教科書的な印象とはちょっと違って感じた。
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