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The Lunch Date(原題)のkuuのレビュー・感想・評価

The Lunch Date(原題)(1989年製作の映画)
3.8
『the lunch date』1989年
10分 米国短編映画(風刺映画) 

列車に乗り遅れたご婦人が、次の列車待ちにカフェでサラダを注文し、フォークを取りに行って戻ると、ご婦人の注文したサラダをアフリカンアメリカンのホームレス男が食べていた。
気取ったご婦人はさぁどうする。。。

最近のNEWSにビリー・アイリッシュがまだ子どもの頃に撮った映像に差別発言があると物議を醸してる。
彼女が子供の頃に撮った映像にボディイメージや人種差別に関するメッセージがあったことに対して彼女は謝罪のコメントを発表した。
アジア系を侮辱する言葉を口にしたとは云え、子供の頃ならしかたないこともない。
しかし、問題は現代米国において白人社会の大人たちが普段の会話において差別的な表現を未だに使っていることかな。
そんな米国の1989年の差別を風刺した作品やしふとタイムリーに考えてしまった。

ほとんど会話らしい会話はなく単純な物語やけど作品の根本には人種問題がある。
短編映画やし、キャラ構築の時間は無い故に作品の最初の1分で、主人公のご婦人の性格が良くわかる。
例えば、彼女は裕福な女性だか神経質で猜疑心が強いって感じかな。
直ぐにキャラ立ちするし、勿論、10分だしテンポがいい。
タイトルバックで監督はアフリカンアメリカンのホームレス男性を登場させ、観てる側は否応なしに貧困者を強く認識させる。
強く認識すればするほど、ご婦人(裕福な白人女性)のキャラも目立つ。
ホームレス男性に対してご婦人は目もくれず、自分の目的(列車に乗車する事)に突き進むが乗り遅れる。
これもまた、ご婦人の人種的意識(この時代でも普通にある差別と云えなくはないやろけど)と性格を表してると観てとれたかな。

ご婦人と男が一枚のお皿のサラダを食べるシーンはクスッと笑え温かささえ感じた。

しかし、『おち』があった後、ご婦人が再びレストランを出たシーンに、この作品の真に伝えたいメッセージがあるんかと思います。
そのシーンには再びホームレスの男性を画面に登場させる。
ご婦人は彼との温かな出来事があったことすら、無かったように最初と同じように目もくれずに通り過ぎる。
この行動が、物語をめちゃめちゃ興味深いものにしてると小生は思う。
と云うのは、本来『おち』があった後じゃ、現代の感覚ならご婦人の行動や心は多少なりとも優しく変化があると思う。
しかし、作品のご婦人は男に会釈すら返すこともなく、何も学んだ節を感じさせない。
これがこの時代の当たり前の一場面であるなら、それこそが、人種差別者への扱いなんやろうなぁと思えたかな。
味わい深い作品ですし、YouTubeなどでも、
『the lunch date』
と検索したら直ぐにでますのでお時間が有ります時、サクッとどうぞ。
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