kkkのk太郎

はじまりのうたのkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

はじまりのうた(2013年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

落ち目の音楽プロデューサーと傷心のシンガーソングライターとの出会いと交流、そしてそれにより生じる変化を描いたミュージカル・ドラマ。

監督/脚本は『ONCE ダブリンの街角で』のジョン・カーニー。

恋人と別れ失意の中にいるシンガーソングライター、グレタ・ジェイムズを演じるのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『ラブ・アクチュアリー』のキーラ・ナイトレイ,OBE。
零落したかつての有名音楽プロデューサー、ダン・マリガンを演じるのは「MCU」シリーズや『グランド・イリュージョン』の、名優マーク・ラファロ。
ダンの娘、バイオレット・マリガンを演じるのは『トゥルー・グリット』のヘイリー・スタインフェルド。
グレタの友人、スティーヴを演じるのは『ガリバー旅行記』『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』の、名優ジェームズ・コーデン,OBE。

ニューヨークを舞台とした大人の悲喜交々。主人公の一人であるグレタを演じたキーラ・ナイトレイがとにかく美しい✨彼女×N.Yという組み合わせの時点でもう勝ち確みたいなものである。

ワシントン・スクエア公園や地下鉄、エンパイア・ステート・ビルが見えるルーフトップなど、ニューヨークの名所の数々を美女がバックバンドを連れて歌い回る、というわかりやすいほどにわかりやすいニューヨーク観光映画。おしゃれで洗練されていて煌びやかで、それでいて品が良い。この映画を見れば誰でもニューヨークに足を運びたくなるだろう。

美女とニューヨークとマルーン5。基本的にはこれだけで出来ている映画であり、ストーリーなんてものは無いに等しい。登場人物はどれも書き割りのようで、まるで生活感というものが感じられない。
各キャラクターそれぞれの悩みも薄っぺらいし、それが解決するまでのプロセスにもあまり共感を見出せなかった。
この映画の締めの部分もなんだかなぁ…。レコードレーベルを通さず、自分たちでアルバムを売ります!でも大物ミュージシャンのコネは使います!値段は1ドルです!1日で1万枚売れましたが、売り上げはバンドメンバー全員で折半します!…甘ったるい寝言みたいな話だなこれ。この頭の中お花畑感には、どんな御伽話でも敵わないだろう。

グレタが歌うライブハウスのシーンから映画は始まり、その後このシーンを終着点としたダンとグレタの、それぞれの長い回想が始まる。これがまどろっこしいというか、物語が全然前に進んでいかないというもどかしさを覚えてしまった。しかも、映画の頭とダンの回想の終わりで、同じグレタのライブシーンが2回も映し出される。そりゃ2回目にはダンの想像する伴奏がついているんだけど、前回その歌を聴いたのは15分前な訳だからね。そんなに短いスパンでおんなじ場面を見させられるというのはダルいし、作劇としても鈍重に過ぎる。
普通にダンのパートから映画を始めれば良かったと思うし、グレタの破局の件なんてそんなに尺を取って描くべきことだとは思えなかった。そんなことより、もっとダンとグレタが音楽的な価値観の相違でぶつかり合ったりしながら、次第に絆が芽生えていくような友情構築のドラマをしっかりと見せて欲しかった。

クライマックスは、マルーン5のボーカルであるアダム・レヴィーンが演じるデイブのライブシーン。
マルーン5のファンからしてみればそれで良いのかも知れないが、彼のことをよく知らない門外漢の自分からしてみれば「お前の歌なんか知らねーよ浮気男😡!!」というのが素直な感想。
そこをフィーチャーするのなら、グレタのルーフトップ・コンサートがクライマックスで良かったんじゃない?とか思ってしまう訳です。

ダンとグレタのラブストーリーになるのか…?と思わせておいて、そこには着地しない。この抑制が効いたストーリーテリングは上品だと思ったけど、もしこの2人がデキちゃったらそれはそれで問題がある。ダンは一応既婚者だからね。
不倫映画になっちゃったらそれこそ物語がしっちゃかめっちゃかになっちゃう訳で、そういう風に考えるとそりゃこの映画の結末はこうせざるを得ない。無難な着地ではあるのだが、そこに面白みがあるかと言われると微妙である。

正直、ストーリーには全く乗れなかったのだが、とにかくキーラ・ナイトレイが美しく、そしてニューヨークの華やかな街並みには心が躍った。ニューヨークのPVとしては完璧な出来であり、そういう意味ではこの作品は堂々たるニューヨーク映画であると言えるだろう。
下手に中身が無い方が良い!ただ街を綺麗に撮ってくれればそれで良い!それが「I ♥ NY」!!…なのか?
kkkのk太郎

kkkのk太郎