まさか

はじまりのうたのまさかのレビュー・感想・評価

はじまりのうた(2013年製作の映画)
4.0
音楽を通して人と人が繋がり、豊かな関係ができあがる。激しい恋愛感情、年の差を超えたほのかな恋情、友情など、音楽が生み出す多様な交流を温かく描いた人間讃歌。

監督は『Onceダブリンの街角で』(2006年製作)のジョン・カーニー。2014年6月に全米5館で限定公開され、口コミで瞬く間に人気が広がり、最終的には1300館以上で上映されて年間全米第9位の観客動員数を記録したらしい。

才能を見込まれて恋人とともにロンドンからNYに活動の場を移したものの、とある事件で失意のどん底に落ちたギタリストのグレタ。ある日バーで披露した自作の曲に感銘を受けた浮浪者姿の男ダンが彼女に話しかけるところから実質的な物語が始まる。

公私ともに大きな支えを失ったダン、約束されていたはずの未来を失ったグレタが音楽を通して気持ちを通わせる。失っていないのは音楽への情熱だけ。2人はそれだけを武器に周囲の人間を巻き込んでバンドを組む。そしてNYの街をスタジオ代わりにゲリラ的な収録を敢行、1枚の画期的な作品を作り上げる。

にわか仕込みでバンドに参加したメンバーの心が徐々に一つになり、やがて大きな果実として実を結ぶ。ともすれば凡庸になりがちなストーリーが輝いているのは、監督の手腕と素晴らしい音楽、そして卓越したカメラワークと俳優陣の自然な演技のゆえだろう。何度も観返したい愛すべき作品。
まさか

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