このレビューはネタバレを含みます
誰もが知っているおとぎ話をベースとして「それぞれの話が起きる前と後に実はこんなことが起きていて……」という物語。
伏線がたくさん張られ、みんなが知る昔話すら伏線として取り込まれ、あらゆる所で回収される気持ちよさ！とくに、誰もが知っているからこそ誰もが感じてきたおとぎ話のほころび・穴（ぴったりのはずのシンデレラの靴はなぜ階段で脱げたの？ジャックが手にした魔法の豆はどこから来たの？）が解決されてる部分が楽しいです。
ドリームワークスのお家芸だったアンチステレオタイプハッピーエンディング（アンチディズニー）をディズニーすら始めた近年の流れに乗っています。
ただ、おとぎ話の疑問を解決したはずが、新たなおとぎ話的疑問をたくさん落としていったような……回収されきらないモヤモヤが残りました。
ミュージカルの映画化ってどうもこういうところあるよな、ブロードウェイってプロットがゆるいのかしら……なんて思って原作のあらすじをwikiで読んだら、そちらの方では全ての辻褄が合いすっきり！疑ってごめんなさいブロードウェイ！
もやもやが残った点としては、
まず、オリジナルでは"Happily Ever After"までの第一幕、その後の第二幕、とわかれているらしいのですが、映画ではなんとなく話が流れていくので、何が原因で「めでたしめでたし」とはならなかったのかがはっきりしない。幸せの絶頂！なのに巨人が表れて崩壊！じゃなくて、王子と結婚しても散々追いかけて見つけ出したプリンセスと結婚しても退屈、やっと子供が生まれたのに旦那は頼りにならない、など切り替えて魅せてほしかったような。また、第一幕の終わりにクライマックスを感じまくってしまったので、ん？まだ続くの？ん？おっとっと……という感じ。最後の最後にもう一クライマックスほしかったような。クライマックスがないのがおとぎ話とちがって現実的ってこと？
次に、途中に出てくるジョニー・デップ。大事な役だけど、チョイ役にしては宣伝されすぎじゃない？みんながジョニー大好きなのは知ってるけど、個人的にはやたら「イケメンなのにこんな恰好もしちゃうんだぜ」のどや顔が毎度苦手。チョイ役なのにジョニーが出てるじゃない！って自分で発見する方が感動が大きかったかも。
あと、シンデレラの王子の浮気性。なんだか最後は中途半端にいい人っぽく終わった所が残念。ミュージカルのように徹底的に悪者にしてほしかった！原作では新たな興奮を求めて白雪姫やオーロラに走るようです。見たかったなぁ。王子兄弟の”Agony”はバカっぽくて最高だったけど！
あとは、ラプンツェルが全体的によくわからなかった！何をもって魔女はあんなに執着していたのか、など映画ではよく読み取れなかったです。しかも、魔女はなんで唐突に消えたの？ラプンツェルも魔女も、今一度何考えているのかなぜ怒ってるのかよくわからなかった……。
最後に一回シンデレラの”I wish”も初見ではよくわからなかった。よくよく考えてみると、楽な生活を願って王子と結婚して、退屈な生活からの脱出を願ってパン屋さんと暮らし始めて、一周まわってまた願って……満たされることはない、という意味なのはわかった。けど、初見でわかりますか？編集のもんだい？もうちょっとわかりやすくしてー！というのは我儘？
まとめてよくよく考えてみると、登場人物それぞれが、何を考えていてどんな気持ちでどうして物事が起きているのかが、不明だったり中途半端に飛ばされた描き方な割に、ピンポイントでアリア的な感情を細かく説明するような歌が挟まれることで、ムラができていてもやもやする、という感じです。
つらつらと挙げましたが、これらはミュージカルのあらすじを読む限りきちんと回収されている模様です。ちゃんと見てないけど！(笑)
もちろんそれぞれのキャストは最高！
エミリー・ブラントはハマっていて、これからもミュージカルに出てほしい！ただ、エミリー・ブラントに注目をぐぐっと寄せた割に途中であっけなく死んでしまったのがびっくり！素敵すぎて他のキャストを食っちゃったんですかね…。
メリル・ストリープもしかり！ぐぐっと注目を寄せた割に死んじゃう！比重がたかすぎて、二人がいなくなっても大丈夫なくらいに他のキャストも魅力的に描いてほしかった！
ジェームズ・コーデンは個人的には「実力派の舞台俳優だぜ！（そうでもない）」感あふれるドヤ顔と、説教臭い歌い方が嫌いなので、ミュージカル映画に毎回「とりあえずコーデン」といった感じでキャスティングするのはいい加減やめて欲しい。
ただ、ジャック役の子が歌い始めた瞬間は心を奪われました。ジャックも赤ずきんも活躍がたのしみ！
アナ・ケンドリックはすごく可愛いのに安定感抜群だし、他も全部あげると文字数が足りないのですが、歌もキャストもよかったです。
ただ物語の構成が…願い始めたらキリがないですね。I wish！
