雨宮はな

チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛の雨宮はなのレビュー・感想・評価

3.0
熱して、冷めた後に残ったものが、その人なのさ。
人を赦すことが、自分が赦されるルートのフラグなのかもしれないね。

副題の「肖像画に秘めた愛」はぶっちゃけ不要。
秘めてるのは下心だけです、本当にありがとうございました。

近年稀にみる、どクズ主人公。
主人公と若手画家の破滅を望んでいた身としては、消化不良な結末だった。
映画的には一番美しい形なのは認めざるを得ない。
なんだかんだいって、自分勝手な奴ほどのらりくらり、ダメージなく生き延びるものだ。

マリアの気概は天晴れだし、ウィレムは無事で本当によかった。
そしてコルネリス、彼こそこの作品の中で最も愛しい存在だと思う。
彼は自分を反省し、愛と赦しを学び取って、善き人へと生まれ変わった。
コルネリスが祈るシーンこそなかったけど、真実を知った時に顔に光がさしていたり、太陽の光を浴びて生活していたり、彼が居なくなったあとの家に祈りのことばが聞こえるのは、コルネリス本人があらためてキリスト教徒として再生したというように見えた。

台所や居間を遠目に撮ったシーンがところどころ絵画のように見えて、とても美しかった。
アナログの時代だからこそ、アナログな美しさとして見えるのかもしれない。
現代的なものではとうてい成立しない美であって、過ぎ去ったからこその美だと思う。

あと、ジュディ・デンチはジュディ・デンチでしかなかった。
彼女がやると、全部「ありがたい感じのお説教おばさん」になるのはなぜなんだ……。
雨宮はな

雨宮はな