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ゆけゆけ二度目の処女のTnTのネタバレレビュー・内容・結末

ゆけゆけ二度目の処女(1969年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

「バカヤロー!」と大声で言える映画にはずれなし。

 凄い、こんな純真な犯罪があっていいのか。低予算で、場所も限定されていて、なにせピンク映画だが、それら予想を遥か越えた血の滾る物語と詩がこの映画には息吹いている。

 屋上が脱出できない場所であり、且つ許された地である。限られた場で物語が成り立つというのをまざまざと見せつけられたかのよう。

 フーテンらにレイプされる少女ポッポ。そのフーテンらに属しつつ嗚咽するような不気味なリアクトのみで、遠くから眺めるだけのツキオ。このレイプシーン、ツキオの生理的嫌悪なのかわからない妙な反応がキモいのと、レイプする男らの無表情が恐ろしい。そして、抵抗していたはずのポッポは、妙なタイミングで抵抗をやめる。この熱のないレイプと、ポッポやツキオの心情変化が観客にわかり難いという奇妙さに、どうやらただのピンク映画ではないなと思わされる。そしてかかる曲のナンセンスだがどこか虚無的な心情を感じさせる、ジャックスみたいな楽曲が冴え渡っている(調べたら今作の前年ぐらいには若松プロ作品にジャックスが曲を提供しているようだ)。ツキオ演じた秋山未痴汚の歌が良い(芸名が厨二病っぽいのも良い)。

 ポッポとツキオ。ポッポはツキオに殺してほしいと頼む。果たされた時点で崩壊するこの約束が彼らを近づけるという皮肉。「殺してやるぞ!」「殺して!」と楽しげに追いかけっこする姿なんて微笑ましささえある。彼らの会話がまた所々ちぐはぐなのがすごい好き。お互いが一人ごと言ってて、時折反応しあうみたいな絶妙な言語感覚。ほぼ詩的/私的言語。ポッポが再びフーテンらに犯される時、彼女は「ゆけゆけ、二度目の処女…」と詩を語り出す。その後ツキオは彼らを惨殺するのだが、まるでその詩にツキオは反応したかのように見えるのだ。しかし、最終的にツキオはポッポに「殺せないよ…」と言う。ツキオは「愛」という言葉は信じないが、やってることはその証でしかない。「恋のニトログリセリン」「帝王切開される地図」。

 殺しが鮮やか。厨二心をグッとこさせる。また犯罪者の当事者意識がリアルなように感じる。ここ最近起きている単身の死刑になりたいがための殺人の、理解できない一面を垣間見るよう(それでいてツキオの殺人に共感してしまうから恐ろしい)。また返り血に濡れたツキオは、その血濡れ姿が本来の姿かってくらいしっくりきていた。若者のレイプもそうだが、ツキオ周辺にいた大人たちの享楽はグロテスクだ。性的というより強欲、物欲に近い。

 音楽のセンスが終始良すぎ。階段を下りるだけの映像にダバダバ〜みたいなスキャットの入るジャジーな曲が挿入されたり、先に述べた殺人シーン前には、なんとFrank Zappaが流れる!著作権が昨今の日本映画(特にインディーズ)の劇伴の自由さの足枷となっているように思えるのは気のせいか。

 ラスト、ドライすぎる。あんなに殺しの約束で結ばれていたはずの二人は、殺せないと断念し、情事も途中でやめ、飛び降り自殺もポッポが気がつくと飛び降りてて、ツキオも特に嘆くこともなく後を追う。落下した二人は地面の端と端で、結びつきというイメージからは程遠い。血すら流れない、無機的な死。
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