emily

ジョルジュ・バタイユ ママンのemilyのレビュー・感想・評価

3.9
離れてくらしていた母親のいるスペイン・カナリア諸島を訪れる青年ピエール。そこで見るのは自分が想像していた母の顔とは全く違う欲望にまみれた女の姿だった。性欲と暴力の世界に欲望を開放し、母のところまで愛の呪縛に囚われ、究極の処までたどり着く。

 ジョルジュ・バタイユの原作を映画化。母演じるのはイサベル・ユペール。ピエール17歳を演じるのがルイ・ガレル。揺れる映像、不穏な空気、壮大な砂浜に囲まれた開放的な背景、美しい海と、きらびやかな太陽、開放的な背景に対照的な親子の関係。母親にべったりのピエールと、子離れできていない母親。不穏なルイ・ガレルの目線に強さが漂ったり、スリリングな行動が空気感から常に漂うイサベル・ユペールの悪事を秘めた目線、二人の絶妙な距離感、危険な境界線を越え、暴力の果ての快楽、うちに秘めた欲望の醜さを淫らな形で垂らしこみ、裏腹な行動と裸体の羅列の先に、歯止めの利かなくなった欲望の究極を見る。痛みが快楽になり、一番手に入れたい拒否してきたものが浮き彫りになる。ルイ・ガレルの喘ぎ声、情けない自慰行為、とろける吐息と、程よい肉体感にはくぎ付けにされた。美しさと醜さが性と生、聖が交差し、人間らしさの極限に溢れる大人と子供の死の思想が零れるラストへの畳みかけがいい。
 
emily

emily