中川梨絵は挙動不審な振る舞いといい落ち着きのなさといい役にはまらないと全然魅力を感じなくなるが、これは別格。田中陽造脚本特有のタナトス的な死の匂いが漂う江戸の裏町をクールに闊歩する堕落した遊廓の女中川梨絵の姿があまりにも似合いすぎていてハードボイルドの主人公のよう。
田中登監督の美的な演出も冴えていて、どん詰まりな裏社会に生きる主人公たちの生きざまを物悲しくもアナーキーに彩る。ベテラン熊谷秀夫による繊細な照明の仕事も最高。そして滑稽なのに悲哀のある死に際のセックスシーンを見事にこなす高橋明と狂っているのか正気なのかよくわからない山科ゆりの名演。
ラスト、この世界から脱出できる術を失ってもクールに呟く中川梨絵に痺れる。