あなぐらむ

(秘)女郎責め地獄のあなぐらむのレビュー・感想・評価

(秘)女郎責め地獄(1973年製作の映画)
4.3
落ちて流れる女郎には 地獄の闇は常日ごろ 男殺しの死神の 白いやわ肌すすり泣く

見終わって「あー映画観たわぁ」としみじみ感じた田中登監督作。
中川梨絵扮する百文女郎、"死神お千"の圧倒的存在感。見事な伝法な口調。田中陽造のまたしても、の心中話を縦糸に、どん底で逞しく生きていく「おんな」を強烈に描き出す。人形浄瑠璃のシーンに見られる映画的な飛躍も楽しい。
冒頭から撮影がとんでもなく、ど肝を抜かれる。パラマウントの山を超えちゃうようなカットがある。毎度絶賛してるが高村倉太郎は凄いよ。ほんとに。長屋内を突き抜ける横移動とか、ぱっと照明が舞台調になる人形浄瑠璃とか、いやもうほんと大変。指だし。

中川梨絵さんは御本人もシネマヴェーラ渋谷で御姿を拝見したが、その迫力ある百文女郎(今で言う大衆店か?)ぶりが見事。啖呵の切り方もいちいち素晴らしい(御本人は成瀬に選ばれた東宝女優としてのプライドがあったようだけど)。彼女を思いやる絵沢萌子も抑えた見事な助演振り。そして、不義のかどで見せしめになっている山科ゆりの静かな迫力。罪人であるのにあの清廉な佇まいと眼差し。心中の行きはぐれと地の底でおんなを売る女郎。
女優賛歌だね田中さんは。俺の大好きなあべ聖も出てるし、高橋明さんがやはり持っていく。

なんというか演出側の「知識」「造詣」の問題があって、「(秘)女郎責め地獄」で言えばお女郎さんの言葉遣い、所作といった日常から始まって、江戸の刑罰の知識まで無いと作れない。演出と役者が共通言語があって始めて「時代劇」になるわけだ。日光江戸村とかで撮ってないでちゃんと撮影所でこういうレガシーを引き継いでいかないと、ほんとに時代劇が撮れなくなるよ。どこを見せるかっていう事だ。