人形浄瑠璃を大胆に取り入れた日活ロマンポルノと聞いて鑑賞したが、トンデモ無いモノを観てしまった。
私娼窟の女郎"死神おせん"とヒモの"富蔵"との話を軸に、心中未遂で非人手下に落ちた盲目の浄瑠璃語りの三味線弾き"お蝶"、そして彼女の許嫁だった人形遣い"梅吉"の物語。
日活の人材と資材が結実した本物の時代劇。
濃密で多くのエピソードを詰め込みながらも、たった77分というのも衝撃的。
1960年代から70年代という時代性を感じるとは言え、土着性の強い残酷物語を艶笑劇で描いたのは、喜劇を求める会社側とドロドロの人間ドラマを志向する監督との折衷で書き上げられた脚本の奇蹟だとか。
この寺山修司やら当時の時代劇やらに見られる、高度成長期に失われた文化の残滓を感じさせる物語や演出は、今では色々な意味で作れないし、通じないだろう。
通じないと言えばサウンドトラックとして流れる浄瑠璃の語りだが、当時の観客なら題目から内容まで分かったのかも知れないが、前情報があったにもかかわらず自分には理解出来ず。
それでも人形像瑠璃を大胆に取り入れたシュールレアリスム的なおせんと梅吉との濡れ場には、ただただ度肝を抜かれた・・・凄いモノを見せられた・・・。
とにかく出演者たちが上手いし、それを写す側も巧み。
ヒロインを演じる中川梨絵の動きや声の使い方も凄みを感じさせるし、その肉感的な肢体を写し撮る方にも美学を感じる。
凄い作品なんだが、ポルノを期待して劇場に足を運んだ当時の観客はどう思ったんだろうなぁ・・・。