来夢

岸辺の旅の来夢のレビュー・感想・評価

岸辺の旅(2015年製作の映画)
4.4
霊とのコミュニケーションを取るような作品は、ついつい「実は主人公死んでるんじゃないか」系の邪推をしながら見てしまいがちで、それが(その通りだったりするから)面白さを半減させてしまったりするんだけれど、その点本作は極力ミスリードさせないような細やかな配慮がみられる(主人公に対して、あなたは死んでないよというニュアンスのことをサラッと言ったり)ので、余計なこと気にせずドラマに集中できるね。幽霊は主人公にしか見えないとかいうベーシックな設定もなく、生きてる人とも死んでる人とも普通に話せてしまう。これは視覚的に難しい霊の描写を容易にするだけじゃなく、正と死の境界線を曖昧にして、これなら幽霊でも変わらないじゃないという油断を視聴者にも主人公にも与えつつ、同時に死とは何だろうという考察を自然と強制する効果がある。この映画、自分で考えているつもりが、まんまと製作者に誘導されているのではないか。主人公が旦那の霊に誘導されているのと同じように。その先に得られるものがきっとあるはず。たくさん考えたくなるね。未亡人の切なさ残る話ながら、ホラーの巨匠ならではの怖さを感じられる面白い作品でした。
主演二人も素晴らしき。
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