るる

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のるるのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

題材と全編長回しの演出が見事にマッチしている。

ティム・ロビンスがメガホンを取った『クレイドル・ウィル・ロック』も舞台を巡る物語で、長回しを多用しながら群像劇を紡いでいくのだが、あちらはゴチャゴチャしすぎていて設定が飲み込みにくい。

それに比べれば、遥かに、シーンの移り変わりが鮮やかで見やすいし、どうやって撮っているのだろう?という演出が多く、映像的魅力はハンパない。

ただ、カットの切り替わりや時間経過を示す箸休めの瞬間がないぶん、物語はどこまでも地続きで、ダラダラとした印象がある。良くも悪くも、まるで人生のように休まる時がない。

集中力の持続が強制されるのは、映画は映画館の暗闇で見てこその映画だ!という創り手の主張のようにも感じる。

脚本自体は、ブロードウェイものとしては結構ありがちなアーティストの夢や苦悩や挫折やプライドや主張が描かれているし、
内なる声との対話、落ち目な父とグレた娘の交流、麻薬中毒の娘、ロクでもない天才肌の同僚に振り回される主人公、アメコミ原作映画をもてはやす業界批判、舞台の上で死のうとする役者、本物の血に熱狂する観客などなどなど、
どこかでみたような題材が混在しているのだが、
それらが一定の緊張感と高いテンションを保って紡がれているあたり、なるほど、評価しないわけにはいかない作品である。

個人的には、映画界=ハリウッドと演劇界=ブロードウェイの関係を真っ向から描いているあたりに新鮮味を感じた。そう、映画と演劇は共通点はあれど、別物なのだ。

映画人からのSNSへの批判、言及という意味では『アイアンマン』の監督が撮った『シェフ』を連想したが、SNSの向こう側にいる有象無象の人々の声まできちんと描いてみせたという意味では画期的。

天才肌で破天荒なエドワード・ノートンが主人公を振り回す立ち居振る舞いは、彼の代表作『ファイトクラブ』で彼を翻弄したブラピを彷彿とさせて面白かった。題材の共通から、多分、狙いすました配役だと思うのだが、どうだろうか。

アーティスト、俳優志望者、特に、演劇人は必見ではなかろうか。
刺さる台詞がいっぱいある、示唆に富む作品だ。
るる

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