みかんぼうや

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

3.7
観終わるまで全く気づかなかった。この作品、20年前に観て衝撃を受けた「アモーレス・ぺロス」の監督の作品だったとは!

オープニングから展開されるワンカット風のお洒落な映像演出と気持ちのいいスタイリッシュなドラムサウンドのせいか、もっとシンプルで分かりやすい“落ちぶれ主人公系”エンタメ作品だと思っていましたが、思った以上にコンセプチュアルで野心的な作品。それはまるで作品内で皮肉られる“ド派手なアクションと演出で観客に迎合するハリウッドを中心とした映画界”を風刺しつつ自ら抗うかのよう。

「バットマン」シリーズで人気映画スターとなったマイケル・キートンが、彼自身の実際の立場を想起させる、「バードマン」シリーズという映画で超有名スターとなるもその後人気に陰りを見せ再起を図る俳優を演ずる。一度、強烈な光を浴びた人間が復活にかける思いと、そのかつての栄光に苦しみ今の自分の存在意義を問い続けフラストレーションを爆発させる複雑な心境は、マイケル本人の心境を映しているかのようで、その演技は圧巻。

その脇を固めるは、1990年代後半~2000年代前半、個人的に一番魅了された俳優、エドワード・ノートン。以前に比べヒット作で姿を見る機会が減りましたが、本作では彼にピッタリなクセのあるキャラクターを見事に演じています(後半はやや存在感が薄れましたが)。

作品の中に見える、ハリウッド(映画界)VSブロードウェイ(演劇界)の構図も面白いです。コンセプチュアルゆえに本作の核心を確実に掴み切れているか分からず“ハマる、刺さる”とまではいかなかったものの、独自のワンカット的映像演出、演者陣の熱演もあり、最後まで展開とオチが気になる作品でした(オチは好みが分かれそうですが、私は好きです)。
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