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バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のTJのレビュー・感想・評価

4.5
「想えば招く」ダークファンタジーでありおっさん哀歌。手垢のついた言葉だけど映画愛に溢れた作品。

舞台製作で復活を目指す中年男。煌びやかなブロードウェイの舞台裏。全く違う畑へ進む彼同様、この作品もアグレッシブに展開します。

リーガンとその仲間を追うドラマ。劇中の主人公以上に、イニャリトゥ監督も頭を抱えたことでしょう。『トゥモローワールド』を思い出させる長回し、アントニオ・サンチェスのドラムスコア。制作側の映画愛がオスカーで爆発してましたねw

彼の人生と被って見えるマイケル・キートン、舞台出身俳優+アメコミ俳優で固めたキャスティングがたまらん。こんなエマも良いよね!むしろめっちゃ良いよね!!!

『愛について〜』は男女が雑談の中でそれぞれの愛を認識するレイモンド・カーヴァー著の短編のひとつ。自尊心に捉われ、妥協に囲まれた年だけど、自分を変える何かはいつもそこにある。時代に残されたリーガンの勝負は、ドラマ好きには堪らない人生賛歌でした。

ヒーローモノをあまり見ない僕にはどストライク。今年のオスカーで「夢が機械で実現され銀幕が姿を変えていく」と歌ったジャック・ブラックのシニカルなパフォーマンスがよぎります。

大衆向けでないし皮肉たっぷり。けれど挑発的な作品は映画界も観客も成長させるのかなと。劇中の衝動が、映画愛がじわじわと大きくなる作品でした。ラスト大好き。


2015.4.11 姫路OS
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