猫脳髄

痴漢ドワーフの猫脳髄のレビュー・感想・評価

痴漢ドワーフ(1973年製作の映画)
3.3
基本的には北欧産のセクスプロイテーション映画だが、ヘンテコぶりがただ者ではない。映画表現に寛容なスウェーデンや西ドイツですら忌避したということだが、これは濡れ場の演出がソフトコアポルノの矩を越えているためだろう。

小人症の悪漢が、母親と営む下宿屋に若い女性たちを拐かしてヤク漬けにし、秘密裏に売春させているという設定で、そこに新たな下宿人の若夫婦が探偵役として絡むという筋書き。小人症はじめいわゆるフリークが登場する作品は、同時代のホラー、スリラー系統だけ見渡してもさほど目新しくない(※1)。ただ、本作で悪漢を演じたトルベン・ビレは玩具にまみれた幼児性と狡猾な犯罪者性と残忍さを同居させた特異な演出を施されている(※2)。

カメラワークもクロースアップを多用して彼の悪漢ぶりとユーモラスな表情の両面を強調するが、やはりビレ自身の振り切った演技によるところが大きい。さらに、オーレ・オルステッドによる前衛音楽をテーマ曲とした素晴らしいオープニングや、効果音や人物の表情などに合わせた突拍子もないオーバーラップなども尋常ではなく、単なるセクスプロイテーションにとどまらない怪作に仕上がった。オープニングとラストを玩具の動く犬で挟むなんて、金輪際見られない。

※1 ジャック・カーディフ「悪魔の植物人間」(1973)、ジョエル・M・リード「悪魔のしたたり」(1974)でも小人症の俳優が登場するが、あくまでも「背が低い大人」という常識的な描写である。もう少し時代が下ってダリオ・アルジェント「フェノミナ」(1985)になると奇形性の強調がリバイバルする
※2 本作の直接的な子孫はデヴィッド・シュモーラー「クロールスペース」(1986)だろう。クラウス・キンスキーのアンコントローラブルな怪演は本作ですら優に超える
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