Brynhildr38

エヴェレスト 神々の山嶺のBrynhildr38のレビュー・感想・評価

エヴェレスト 神々の山嶺(2016年製作の映画)
2.8
残念・・・
ネパールで出会った山岳カメラマンと孤高の天才クライマーが、世界最高峰のエヴェレストで前人未踏の過酷な挑戦に臨む姿を描く。(あらすじ)

原作は「第11回柴田錬三郎賞」を受賞した夢枕獏氏の「神々の山嶺」。漫画版も「第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞」を受賞しており、そのストーリーの面白さは折り紙つきで、全世界で合計発行部数100万部を超す大ベストセラー。

私も原作に魅了された一人。公開当時楽しみにしていた覚えあるが「標高8,000m級の大爆死」と言う酷評に、「あぁ〜」と見るのを躊躇ってきました。が、秘めていた想い(基本観たいので)も募り満を持して、今回じっくり鑑賞。

覚悟していた通り、小説の映画化の際のトラップって奴で、①主要キャラのイメチェンで小説ファンを失望させ、②小説のように主人公の内面を上手く描けず、③尺の長さのために物語のエッセンスを抽出したつもりが物足りなさを招いてしまってる。

本作は、ギラギラしつつも思うようにならず大切なものを諦めかけていた深町が、羽生という純粋な登山家に出会いその生き様に惹かれ、「何か」を得て救われる。彼に救われた深町は、羽生の偉業を見届けるために彼のもとに向かい、連れて帰らなくてはならなかった。そうしたかった・・という話かと。

それが映像では、伝わって欲しいのに十分伝わらず、感情移入できず、作品のテーマ「なぜ山に登るのか?」に対する答えも「よくわからない」と言う負のスパイラルに。

それでも演じたキャストは熱演。
ギラッとした山岳カメラマン深町誠演じる岡田准一は、ジャニーズらしからぬ求道者で体幹鍛えすぎてザックが軽そうに見えるから岩を詰められたとか。モンベル山ガール姿の岸涼子を演じた尾野真千子は、素人なら行くだけでも辛い標高5,200mのロケでもケロッとしていたというかなりタフな女優、この作品での立ち位置はとても残念。不器用な天才クライマー羽生丈二を演じる阿部寛は、ラストの眼力がトラウマ級で他の誰にも真似できないと思わせる素晴らしい役者。

夢を諦めない人間を描くヒューマンドラマで、命を賭けて登攀に挑むアスリートを追うエンターテインメントを期待してたのですが・・・

それは、フランスでアニメーション映画化され、2022年7月に公開された「神々の山嶺」に期待したいと思います。
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