りょう

きみはいい子のりょうのレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
3.8
 幼児虐待、いじめ、学級崩壊、モンスターペアレント、自閉症…など、子どもにまつわるネガティブなできごとが次々と描かれます。映画とわかっていても観るのがしんどくなりました。ちゃんとした物語はありますが、そういう辛辣な描写が物語に溶けこんでいない印象だったからかもしれません。
 さまざまな問題提起があって、そこにとどめるだけの意図なら理解できますが、希望のある結末として回収できていないところは、こういうテーマだからこそ気がかりです。当然に大人たちの責任ですが、だからといって、子どもたちの境遇をそのままにしてしまうのは、映画の完結としてあまりに不憫です。キャッチコピーのように、“抱きしめる”ことだけで問題が解決するわけではありません。
 おそらく意図的な表現だと思いますが、育児をする父親が1人も登場しません。シングルマザー、父親が単身赴任や休日も仕事…など、“育児は母親がするもの”という間違ったメッセージにならないか心配です。そう勘違いさせるセリフを当事者である母親も言っていました。
 小学校の新任教師である岡野は頑張っていたと思います。ちょっと愚痴ったり、あまり熱血漢でなかったり、「たまたま選択した職業が教師だった」という雰囲気が好印象でした。尾野真千子さんが演じた母親の虐待シーンが強烈で、被害者である娘への言葉や視線は、たとえ演技であっても躊躇してしまうレベルです。その娘を演じた子役さんの反応もリアルすぎて心配になりました。ちゃんとケアしてあげないとトラウマになりそうです。
 給食で栄養を確保している小中学生が少なくないようです。最近の報道でも貧弱な給食メニューが話題になっていますが、自分のころとはボリュームが違いすぎます。ネグレクトの被害に遭っている男児の頬には“はたけ”があるし、汚れた服装がいつも一緒だったりするので、もっと早く察知するのが学校の役割のはずです。国や地方公共団体の教育予算が削減されたり、教師の志願者が激減していることを思えば、子どもたちのために何をすべきかわかりそうなものですが…。そんな社会問題を想起させるという意味では、とても貴重な作品でした。
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