あさ

きみはいい子のあさのレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
4.0
不完全燃焼の『52ヘルツの鯨たち』(映画版)をみた後に知るコレ、あまりにも口直し。解像度が全然高くてやるせない、すごい。あとシンプルに映像が綺麗も演出も綺麗で呉監督のファンになりそうである。

どんな人間にも「正義」心から生まれる残酷な発言がある。帰る家がない子を認知した後で、抱きしめられることを宿題にすることが如何に残酷なことかと。美しさと恐ろしさが共存しているなあと、私は感じました。絶対の解決策がなくて。逃げ場を作ること、「助けて」って言えるようにすること。コレに尽きるけれど、本当に言うだけ簡単なことだ。
しかし高良健吾の、不自由なく育って来たことから来る無頓着さがリアルだった…桜の中走るシーンは演出的すぎるけれど、なんだか今はすごく心に響くワンシーンだったよ。叩いた扉の向こうでは、何も間に合っていないかもしれない。もしくはパンを渡せるかもしれない。現実は現実を生きる者のみが知る、残酷。

マチコが抱きしめられるシーンは流石にウッとなってしまった。『52〜』で描かれる虐待で親にフォーカスしなかった過ちを、この作品を見ることで少しでも心の中で昇華できた。それでスッキリしてるのもキモいけど。池脇千鶴の「ウチの子になる?」は明らかにアウト発言と思うし、どれだけ暴力を振るわれても子から母への愛着が強いのも悲しいことだと思うし(暴力を振るわれているからこそ余計に愛着が強くなってしまうのだと思うけれど)。どうか救われてほしい、母子共に。いつか娘が母を恨む日が来ようと。

一つ惜しいこととすれば、女性の連帯が描かれることの素晴らしさの裏で、男性の不在がかなり強いかなと。夫たちはどこへ…。物語を描く上で絞ったんだろうけどね。

あと、学級で起きているアレが集団いじめだって、伝えることは心底難しいね。絶対に、絶対に教えなければならないけれど。人間っていくつでも残酷だよ。

P.S.永遠に『進撃の巨人』がバイブルと化しているので、「いい子」(いい人)って"自分にとって都合のいい人、すべての人にとって都合の良い人なんていない"byアルミン・アルレルトがずっと心の中で反芻いたしました。
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