コーヒーマメ

きみはいい子のコーヒーマメのレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
4.1
「抱きしめる」って、言語化できない不思議な気持ちにさせてくれる素敵なもの。
それは、子供も大人も一緒。
終盤まではとても暗くて辛い話だけど、最後には一筋の希望を見つけた清々しい気持ちになって、劇場をあとにした。

小学校の新米教師の奮闘と虐待してしまう母の苦悩、認知症の初期症状が出始めた独り身の老人の日常が交錯する群像劇。
とても整理された脚本が秀逸で、終盤に向かうにつれてそれぞれの話が一つに集約されていく...みたいなお決まりの手法を使わなかったのも良かった。

そして何より、俳優が全員良かった!!!
高良健吾はイケメンすぎるけど、ポケットに両手を突っ込みながら猫背でノソノソと歩く姿は、とても弱々しくて、全く頼れない若手教師そのものだった。
鼻立ちが綺麗ですらっとしていてプライドが高そうに見える尾野真千子にとって、子供に手を上げる母親は、これ以上ないほどのはまり役。
自然ながらも複雑な表情に引き込まれた。
主演二人に引けを取らない、それどころか、一歩前に出るくらい目立っていたのは、自閉症を患った子供を演じた加部亜門くん。
衝撃を受けた。
同じ症状の人物を演じた役者は五万といるが、今まで観たなかで断トツで上手かった、というか、凄まじかった。
彼の演技こそ、言葉にできない力を持っていた。

しかし、一つ一つの題材がヘヴィーなぶん、それぞれの問題を深くまで突き詰められていなかったなぁ、というのも正直な印象。
やはり、三つのストーリーを語るには、二時間は少し短かったと思う。

いじめ、虐待、自閉症、認知症、老人の独り暮らし、、、
現代の社会に蔓延る難しい問題を正面から切り取った作品。
観ていて辛いシーンもあるが、最期には温かい気持ちになれた。
“優しさ”は風のように流れ、伝染し、人々に“幸せ”という種を植え付けてくれる。