垂直落下式サミング

パシフィック・リム アップライジングの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

2.9
再び出現した怪獣に対抗すべく人類が立ち上がる続編。
前作では物足りなかった各機体の個性を活かした戦いはブラッシュアップされており、イェーガー部隊の多国籍感はポリコレ的にも大正解である。白人、黒人だけでなく、中国、日本、インドと、アジア系推しのキャスティング。まあ、主にチャイナマネーの影響が強いのだが、今更そんなこと言っても仕方ないし、実際今の中国の国際的な影響力を鑑みればこのくらいの役回りでもそんなに気にならなかった。それこそ映画を作るのに使われるのが誰の銭かなんてことはどうでもいいことだ。金なんて、出せるやつが、出せるときに、出したいだけ出せばいい。
予告の時点でロボットの重厚感には期待していなかったからいいんだけど、今回よくないと思ったのは、おはなしを安心して見られないところ。
なんだかなぁと思うのは、新たにロボットに搭載された科学兵器の雑さ。その機能の特異さに入れ込むのはいいのだけれど、それが性能面で確かな必然性や有効性が担保されたものではなく、映画的な見せ場ありきのアイデアに頼った、単なる見得切りのための機能になってしまっていること。
例えば、ジプシーアベンジャーが、電磁力かなんかで自動車を浮かして投げるとか、ビルの鉄骨を引き寄せる技をみせるじゃないですか。何そのピンポイントな武器って思いません?そんなの街中で使っていいの?車の中に人乗ってたらどうすんの?保険おりるわけ?アクセサリーつけてたら首とか締まっちゃうんじゃないの?腕時計してるほうの腕は脱臼じゃ済まないし、イアリングしてたら耳だって捥げちゃうよね?
こういうところ、ちゃんとしてないですよね。建造物を破壊することを前提とした兵器なんておかしいでしょう。見せたい絵のほうばかりを重視するから、ただでさえ軽薄な実在感がさらに遠ざかる。
それで、ようやく人類が団結し、新型が出そろって人類の逆襲かと思ったら、揃いも揃って敵のサイズがでかくなったらまったく対応できないザコっていう。なめてんの?
ロボットが弱いとか、搭載してる武器がバカなのはいい。でも、人命を軽視しながら戦っているようにみえることだけはいただけない。一作目はリアリティに寄りながらも、客に余計なことを考えさせないよう、実はかなり気を遣っていた。
序盤に描かれた漁船救出で人命を第一にしていることからもわかるように、ファミリームービーとして安心できる作りに徹している。怪獣との戦闘は海上や港など人気のない場所で行われ、ビル街で戦う場合は人の視点を映さず、一般人は防空壕のような場所にみんな逃げているというのをみせることで、見る者が余計な心配をしなくてもいいように徹底していたのだが、本作はその配慮が足りない。
都市部の戦闘シーンでイェーガーのすぐ足元を逃げ惑う人々の様子とかを見じゃないですか?あれホントに危なっかしい。
ここにいた女子高生の何人かは味方のロボットのほうに踏み潰されているんだろうな、両親が目の前で瓦礫の下敷きになってしまう子供がいるんだろうなと、ジプシーアベンジャーが歩を進めた先で起こる惨劇が具体的に想像されてしまって、どうしても気になっちゃうんですよね。上手くいったとして、これが行き着く先は『ガメラ3邪神覚醒』なわけですが、今更そんな辛気臭いもんみせないでほしい。
はたして本作の作り手たちは、ゴジラやウルトラマンを撮っていた人たちが、映像作家として本当にみせたいもの・本気でやりたいことを抑えて、怪獣は「子供が見るもの」なのだからと、どれほど表現に気を配っていたのか、そこんところをしっかりと認識していたのだろうか。
正直微妙だったので世界観を深く知ろうとパンフレット買ったんだけど、マジでカスな本だったので、よほど気に入ったんじゃない限り買わないほうがいいよ。ヴィジュアルブック系のパンフで、各機体のステータスとか何も載ってないし、なんか怪獣の名前を間違えて載せてる。またあとで、ちゃんとした設定資料集が出るんだろうけど、さすがにアートワークが雑。