せみ多論

マイ・インターンのせみ多論のレビュー・感想・評価

マイ・インターン(2015年製作の映画)
3.5
チャンスを掴むことは誰にでもできる、年齢、性別、人種に関係なく。そういうメッセージを感じる。
本作で監督は男女間の恋愛ではなく友情を描きたかったと語っていた。確かに70歳のインターンとやり手の女若社長、この間に恋愛が絡んだら面白いかもしれないけど、そりゃあ大層胡散臭いものに感じてしまっただろう。年齢差と言うものが二人の間から恋愛の香りを払拭していたし、お互いにそれぞれ別のパートナーを用意することで、後押しもかけていた。

お話は王道だと思うし、つまらなくはない。最初は疎まれていたデニーロ演じるベンがその手腕を発揮し、アン・ハサウェイ演じるジュールズ、そして他の社員から信頼を勝ち得ていく姿は素敵だし、爽快感もある。妻にも先立たれ、長年勤めていた仕事も退職した老人が、新たな職場で新たな関係を築いていく、そしてそれが話の展開とともに好転していくなら気持ちの良くないはずがない。確かにご都合主義ではあるかもしれないけども、ね。

強いて気になるところと言えば二つ。
ベンと仲良しの社員3人組がジュールズとの距離を縮めるエピソードの何それ感。なぜ泥棒まがいの侵入までして?メールの削除のために?急に母親には心臓の病があることに?あそこだけ明らかに話が浮いてる。正直なところついていけなかった。

もう一点はジュールズが最初に言った、私は難しい女だからとか、厳しい女だからとかみたいな言葉の説得力のなさ。
最初から最後までかなりフランクで優しい社長にしか見えませんでした。
何故かって、それは以前に見た『プラダを着た悪魔』のミランダ。そうあれこそが怖い社長のイメージで強烈に焼き付いているからでしょう。だからこそジュールズが自分で自らを嘆くように言えば言う程に、そうでもないんだよなぁと思ってしまった。残念。

恐らくジュールズはベンと出会ったことによって変わったのだろうけれども、そのどこがと言われると具体的な部分がぼんやりとしか感じられなかった。夫との関係は良好になったし、机の上は片付いた。ただジュールズの中で、またはベンの中で、決定的な変化は何だったのか、それはよくわからなかった。ただ二人の人生がそれ以前よりも幸せなものにはなったのだということだけとしか感じられない。それはもちろん素敵なことだけど、少し物足りないような気持ちにもなってしまったのです。

でも少し元気がないとき、誰かと観て元気になれる、そういうシンプルな良さがある映画だと思います。嫌いじゃないです。
せみ多論

せみ多論