前方後円墳

揮発性の女の前方後円墳のレビュー・感想・評価

揮発性の女(2004年製作の映画)
3.0
新進気鋭の6人の監督が“エロス"をテーマに描くラブコレクションプロジェクトの第五弾。
とにかく中年の未亡人の匂いをプンプンさせている。しかし、悦子演じる石井苗子は撮影時には50代なのであるが、とてもそんな風には見えずにきれいなのだ。役作りとしてとてもおばさん臭いがどう見てもきれいなのだ。これが熊切監督の狙いであることは言うまでもないが、

この悦子、かなり変人だ。風呂場でウーパールーパーを飼っている。近所づきあいもないようだ。で、こんな人が住んでいるところに銀行強盗犯の理一(澤田俊輔)が現れて、すったもんだやっているうちに住み着くようになる。これはちょっと変則だが"ストックホルム症候群"だ。だが、それほどお互いが惹かれあうほどのエピソードも交流もない。完全に悦子が理一のことをかわいい奴と思える、肝っ玉からだ。男女の関係になったのも彼女の誘いからだ。

理一は彼女の部屋で歌舞伎の練習をしている場面がある。練習してどうこうなる状況か?と、なんだか暢気なところが笑える。

で、普通に二人でしばらく生活していたのだが、当然そんな生活が永久に続くわけがなく、最後はドタバタ劇となった挙句、彼らの行く末は持ち越しとなる。それはそれで幸せなのかもしれない。
悦子のその揮発性。すぐさま気体になってしまうような心の化学変化がおもしろい。すぐにキレるし、暴力的だし、いろいろな激しさを持っている。

悦子は強い女性だと思う。その先に彼と別れることになったとして、どうしようもないぐらいに悲しんだとしても、彼女はそれなりに生きていそうな気がするのだ。