このレビューはネタバレを含みます
エジプトの王宮の煌びやかさは非常に見応えがあり、これだけでも映画を観たという気持ちになれたし、映画の中でヘブライ人奴隷がなければ王宮が作れなかったように大量の美術スタッフの血と汗の存在がしのばれた。
物語としてはよく知られたものの通りであったが、モーゼのキャラクターや神による災害に現代的リアリティを持たせようとしていたのはそれなりによかった。
海が割れる奇跡を津波の前兆として表現したのもアイデアだな〜と感銘をうけた。
とはいえそれらが効果的に機能したかといえば、解釈としては興味深いのだけど、全体を通して旧約聖書の神の超然的残酷とその権威を描きたいのか、モーゼとラムセスの人間的なしがらみにスポットをあてて描きたいのかというのがイマイチ明確でなかったように思われる。
最後にモーゼとラムセスがなぜこのように違う結果になったのかということも、とくに理由が与えられておらず、ぼんやりと神が味方したからとかヘブライ生まれだったからとか物語がそうなってるからなどという解しか存在しなさそうであった。
神の言葉を少年に代弁させるというのも、青く燃える木だけの方がカッコよかったのではとも思ったし、メッセンジャーという立ち位置だというのが途中のモーゼの台詞でいうまで、これは偶像崇拝ということなのでは…などと無駄にハラハラしてしまった。金の牡牛像のエピソードがだいぶ省略されたので、どうでもよかったのかもしれん。