ヤマ

ザ・ウォークのヤマのレビュー・感想・評価

ザ・ウォーク(2015年製作の映画)
4.8
全てが一度きりの世界。
永遠なんてものは何も無い。
「なんでそんな無意味なことするの?」と誰もが口にする。けれど人々はその姿を見て狂喜する。
人生という一度きりのこの舞台で、その一歩を踏み出せる人間がどれだけいるのだろう。

そんな真面目なこと書きましたが…

笑った!!
脚本と演出のセンスが緊張と緩和の連続。ゼメキス節全開。
ジョセフが若かりし頃のマイケルJフォックスそっくり。飄々とした演技も素晴らしい。

綱渡り本番からは、登場人物も、そして映画を観ている自分も、フィリップの一世一代のショーに翻弄されます。
音楽の使い方も抜群。
エリーゼのためにの頭の『タラタラタララ〜』の繰り返しのところがまるで綱渡りしてる足を表してるみたいじゃないですかね。

ビルの間にワイヤーを引いて、その上を歩く。なぜこんな神々しいのか。
第一歩を踏み出す時に雲がサーッと晴れていく演出は、ショウの幕開けと共に何者かに背中を押されるような恐怖を覚えます。

スパイモノのような緊張感とコミカルな演出、そしてNYの美しさが化学反応を起こし、フィリップのサーカスは始まる。
笑った後に、何とも言えない高揚感が襲ってきて、怖すぎてまた笑ってしまう。最終的には泣いた。

もうワールドトレードセンターは無いし、あの事件には作中では触れない。
でもあの最高の舞台への敬意と、愛が込められている。サイン、見たかったな…。

笑ってハラハラして感動する。
一歩一歩、一分一秒の重みを確かに感じられる。これを観たらもう風船おじさんを笑えない。
ロバートゼメキスまたしてもありがとう、大傑作!
ヤマ

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