くもすけ

ザ・ウォークのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ウォーク(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

先にマン・オン・ワイヤーを見た。そちらはフィリップの人柄と断片的な当時の映像から、事件の様子を想像する楽しさがあった。対して本作は安易な想像で「勢いでいけるっしょ」という考えを、視覚的に思いとどまらせる。

タワーを上から下からなめまわしてわかるのは、いかに巨大な構造物で、タワー間がいかに離れているか。設営がどれだけ突貫で無謀な作業の連続であるか。いざ綱渡りを成功させてなお、往復を決めるフィリップがどれだけ狂っているか。

映画独自の脚色もしている。師匠が祖父から受け継いだワイヤーワークの継承、高所恐怖症の仲間、ウォーターゲート、ツインタワー追悼。

回想形式をとっていて、全体の語り口もドキュとほぼ同じ。回想自体はたるく感じるが、在りし日のタワーを眺める時期と位置に含みがある。

74年を回想するレヴィット演じるフィリップ(25には見えない)が立っているのは自由の女神像の頭部。女神像は老朽化による大改修工事のため1984から1986年まで一般公開がされていなかった。フィリップはそのリオープニングイベントでパフォーマンスを披露している。ただし実際にはパフォーマンスの場所は女神像ではなくリンカーンセンターだったようだが。
かわって現代の女神像。9.11以降安全上の理由から女神像頭部展望台への立ち入りが禁止されていたが、ようやく09年から解禁されていた。映画では2つの嘘の展望が重なるように意識したのだろう