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レヴェナント:蘇えりし者のslowのレビュー・感想・評価

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)
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グリズリーは大ボスくらいに思っていたので割とひょっこり出てきて驚いた。むしろ食い気味。序盤に深傷を負った主人公で150分(体力も映画も)持ちますかという心配も何のその。日本の時代劇を思わせる雰囲気漂う森の中で(音も効果的だし痩せて背の高い木々は竹林の中のようだった)、カメラは時にドキュメンタリーのように心に迫り、時に逃走中のように姿を追い回す。イニャリトゥってこんな映画撮る人だったかな。ロケーションをこれでもかと活かすカメラワークが素晴らしく恐ろし過ぎた(撮影監督がルベツキだと後で知った)。結果的にディカプリオが初のオスカーを掴んだ記念すべき作品となったわけだけれど、確かに鬼気迫る劫火の如き生命を体現する様は圧巻で、何度も死の淵から這い上がり続けるという演技は、まさにイン・トゥ・ザ・ワイルドだった。でも配役の妙としては、ディカプリオよりもトム・ハーディとウィル・ポールターだろうか。この2人巧い。登場人物が多くない分余計に存在感が際立っていた。話自体はわりとミクロなもの(個人的復讐)なのに、途轍もなく壮大な奥行き(生命)を感じる物語となっていて、この雪山での数々の出来事が神のみぞ知るといったものになっていたのも、本作をひとつ格式高いものにしていたと思う。こんな親子愛の描き方もあるんだな。もしかしたら、気が付いていないだけでもっと大事なテーマなどあったのかもしれない。ただ、万人に勧められるような傑作であったかと言われれば、そうとも言えない。引いた目線で観れば、お金と時間をかけて役者にも無理を強いながら苦労して撮影したらこういう作品になるだろうとも思えてしまう。それは『恐怖の報酬』や『フィツカラルド』にも感じたことだった(どちらも一見の価値はある作品)。あと男男しているし、ずっと痛々しいし…等々。しかし、大前提として監督にそれを組み立てる力量がなければ成立しないわけで、作品としては一級品かと。
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