パイルD3

彼方からの手紙のパイルD3のレビュー・感想・評価

彼方からの手紙(2008年製作の映画)
4.0
《間もなく濱口竜介監督の新作が公開されるので、監督作と関連作品をいくつか拾っていきます。》
本日は瀬田なつき監督の「彼方からの手紙」

濱口監督の「PASSION」には、瀬田なつき監督が助監督で参加していて、同じく東京学芸大大学院での瀬田監督の卒制作品が「彼方からの手紙」
今作に濱口監督は、キャスティングで参加していて、こんなリレーションシップは、思わず嬉しくなる。

「彼方からの手紙」は、瀬田監督の独特なイメージングの中に浮かぶ繊細なタッチが既に完成していたことがわかる作品。

異空間へのナビ度が強い映像は、当然“好き嫌い“はあるとは思うが、豊かな感性は美観と併せて唯一無二、今の日本の女性映像作家として希少な存在だと思う。
この作品があることで、世間の評価など関係なく好きな監督の一人。


【彼方からの手紙】

不動産屋を訪れた少女が、かつて父親が住んでいた部屋を見たいと言いだしたことから、
彼女をその部屋に案内することになる男の話…

言葉にするとこれだけのことなのだが、
少女の不思議な存在感、漂う淋しげな空気、ある瞬間、奇異な世界へトリップさせられて、現実との境目がわからなくなる。
幻夢ではなく、リアルな見覚えのある近しい場所への迷走で、言葉ではうまく説明できないが、モヤモヤしながらも心地よくなる感じと言えばいいか…。

背景を静かに流れる劇伴が美し過ぎて、観終えた後もしばらく、この一抹の淋しさを抱く世界観から抜け出せなくなった。
やわらかい物腰の流れと見せて、意外と芯が強く、一度ハマるとこれはクセになる。

【瀬田なつき監督】
作品ではオリジナル脚本の「5Windows」と原作モノながら「HOMESTAY」が、わたしの好みもありますが、瀬田監督の世界観が生かされている逸品だと思います。

瀬田監督作には染谷将太がよく出演していますが、染谷将太の監督作品「シミラーバットディファレント」では共同脚本として参加しています。ここにも意外なリレーションシップがありました
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