MasaichiYaguchi

デビルズ・ノットのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

デビルズ・ノット(2013年製作の映画)
3.3
1993年5月5日、アメリカのアーカンソー州ウェスト・メンフィスで起きた3人の8歳男児殺人事件「ウェスト・メンフィス3」についての書籍「悪魔の結び目」を基にしたサスペンス映画。
この猟奇殺人事件に関しては、「パラダイス・ロスト」3部作、そしてピーター・ジャクソン製作の「West of Memphis」といったドキュメンタリー映画があるので、事件のあらましを知っている人もいると思う。
史上最悪の冤罪事件とも呼ばれるこの事件の背景には、当時のウェスト・メンフィスが悪魔的儀式の虐待に対してヒステリックになっていた場所であったことが一つある。
更にこの事件に対する地元警察の怠慢による証拠紛失等の杜撰さ、自白の強要、事件と関係のない人々による作り話のような証言の数々の採用といった呆れ返るような実態が次々と明らかにされる。
我々観客もこの事件に踊らされた人々同様、映画に仕掛けられた「ミスリード」に惑わされてしまう。
この事件の犯人と目された16~18歳の若者3人に対し、事件の成り行きの不自然さから無罪と考えた私立探偵のロン・ラックスは事件の背後にある深い闇に理性的に迫っていく。
このロンをコリン・ファースが、被害者の母親の一人パムをリース・ウィザースプーンという二人のアカデミー賞受賞キャストが演じている。
現代の「魔女狩り」とも呼ぶべきこの事件は、思春期の10代の若者らしい反発心から地域に馴染めず、ヘヴィメタルやスティーブン・キングの小説、ウィッカに深く興味を持っていただけで悪魔崇拝者と見倣され、殺人犯にまで仕立て上げられた社会の怖さを炙り出す。
限りなく怪しい人物はいるものの、事件の真相は未だ藪の中だ。