Melko

陽のあたる教室のMelkoのレビュー・感想・評価

陽のあたる教室(1995年製作の映画)
3.9
「不思議なもんだな。嫌々ついた教職、今となっては、とても離れがたい」

1965年から1995年の30年を音楽教師として駆け抜けた、1人の男の物語。

ホランド先生は元バンドミュージシャン。
食い繋ぐ為、たまたま取っていた教員免許を活かして高校の音楽教師に。
そこでは校内オーケストラのコーチも任されるが、心ここにあらずな生徒、何回やってもテンポの合わない生徒、反抗的な態度の生徒、様々な生徒に四苦八苦。「あいつら、俺の話を聞きゃしねぇ」
ではなぜ彼らは先生の話を聞かないのか?
泣くほど練習しても、なぜ楽器が上手く吹けないのか?

ただのバンドマンから、
「人に物を教えるとは」を体当たりで学び生徒たちと触れ合いぶつかり合い、我流で教師になっていくホランド先生。
まさかのマーチングバンド結成、教え子の戦死。時代の移り変わりは、音楽の移り変わりでもある。

ホランド先生が不器用ながら痛快に音楽教師やってる前半、そしてそこから後半は、ガラッと雰囲気が変わる。
前半部分で図らずも蔑ろにしていた自身の家庭での問題、ただならぬ関係、更には教職の危機と、ホランド先生の内面の葛藤と闘いを描く後半。
この作品は、この2部構成の分かれ目が非常に分かりやすい。2時間半、ダレることなく見れた。
その分、前半の数人の生徒以外は生徒の存在が薄く家庭問題が中心だったことがちょっと残念。
あと、ただならぬ関係なロウィーナのくだりが長すぎ。わたしは本当にこうゆう展開が嫌いなので、めちゃくちゃヒヤヒヤした。若さゆえ。絶対気づいてるのに、何も言わない妻。見返すアルバム。
しかし、あそこであの判断と行動ができる人が、ラストのあの高揚感を手にすることができるんですよ、と人類に言いたい。

まあでも、自分の人生で一番好きなこと音楽が聴こえない(息子)ってのはやっぱりショックだよね。無意識のうちに避けてたんだろうなあ。向き合うの。
そんな息子に送る曲、ちょっと白々しい。まあいいか。

やはり前半の生徒とのくだりが好き。
「家族の中で私だけ落ちこぼれ」
「生まれた時から勉強が苦手」
そんな彼らに、根気強くしぶとく教える、忍耐の音楽。
何か一つ、一曲、一瞬、一音、
吹けるように、叩けるようになった時の生徒の溌剌とした笑顔。
ほんの少しの成功体験が、何年、何十年経っても、自分の自信に繋がる。勉強も運動もできないけど、音楽の授業は大好きだった自分にも分かるところがあった。

原題はそのまんま。
邦題は、なかなかイカしてる。陽の当たる、ホランド先生の音楽室。薄暗く寒い描写の冒頭から比べて、ラストの同じ教室は、見方が全然違っていた。

と、感動の作品にあまり無粋なこと言いたくないのだけど…
うっすら…というかガッツリ、ジャケット詐欺?こんなシーンありましたっけ…?見逃した?
Melko

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