デニロ

美少女プロレス 失神10秒前のデニロのレビュー・感想・評価

美少女プロレス 失神10秒前(1984年製作の映画)
3.0
女子プロレスには何の興味もなかったが井田真木子の文体に興味を持ち、すぐ手に入る「井田真木子と女子プロレスの時代」という著作を読んだ。1985年から1988年にかけてプロレス雑誌に掲載された記事を再構成した著作だ。見たこともないクラッシュギャルズの長与千種、ライオネル飛鳥や神取忍等が生き生きと描写されていた。そうなるとそこに書かれていた「プロレス少女伝説」という大宅壮一ノンフィクション賞受賞作を読みたくなる。しかし絶版で、諦めかけていたところ、井田真木子著作集が発刊されていて所載されていた。そこには自分自身を語る肉体と言葉を持つ彼女たちがいて、圧倒されるばかりだ。井田真木子の巧みな誘導もあるのだろうが、それ以上に彼女たちは真剣に自分自身に立ち向かっていた。2001年40代半ばで早世した著者もその世界に巻き込まれながら徐々に内省的になっていく。

1984年製作公開。佐伯俊道脚本、那須博之監督。山本奈津子、小田かおる主演の本作はプロレス愛に溢れているとはとても言い難い物語で、ただただ女性の裸を写すに都合のいいアイテムだったとでもいおうか。ロマンポルノの看板をかなぐり捨てもはやアダルトビデオの如き絡み方。ロマンポルノ嚆矢の平静ではいられない俳優たちの佇まいを感じることはなく、もはや余裕をもって性を商品化して流通させている。キース・リチャーズが、ロック、ロックって、ロックン・ロールのロールはどこに行ったんだ、って言ってたけれど、ロマンポルノのロマンもいつしかどこかに行ってしまった。スウィングしなけりゃ意味がないのに。

あ、当時、クールビューティ小田かおる好きでした。山本奈津子は可愛すぎて痛々しかった。

国立映画アーカイブ「1980年代日本映画――試行と新生」にて
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