MikiMickle

WISH I WAS HERE/僕らのいる場所のMikiMickleのレビュー・感想・評価

4.0
監督・主演・脚本ザック・ブラフ

35歳、俳優を目指すエイダンは、数年前にフケ用シャンプーのCMに出て以来無職。
子供たちを学校に送っていく傍ら、日々オーディションを受けている。
妻のサラは、同僚のセクハラに耐えながらも、つまらないデータ入力の仕事をして一家を支えている。
娘のグレースと息子のタッカーの通う、ユダヤ教の私立学校の学費は、敬虔なユダヤ教信者で堅物でちょっとクセのあるエイダンの父が払っている。
ある日、その父がガンを患い、治療費の為に学費が払えなくなり、二人は退学。
幼いときに公立の学校でいじめられた経験のあるエイダンは、学期末まで子供たちをホームスクール(自宅学習)で教える事にするのだがうまくいかない。
そんな中、臨床試験中の治療をうけた事で、父が余命わずかとなってしまう。
そんな父に会おうとしない弟のノア。父との確執からか、鬱を抱えてトレーラーハウスに引きこもっているオタク。

自分の夢を追うばかりで、きちんと現実に向き合ってこなかったエイダンは、
子供のため、父のため、妻のため、弟のため、少しずつ前進していく…

このエイダンと家族それぞれの変化と、家族再生のの話です。

エイダン、ダメダメ男w
無職だし、fuckばかり言ってるし(笑)
子供の時になりたかった、世界を守るヒーローの妄想ばかりしている。
しかし、祖父の死への不安を抱える子供たちに、なにをしてあげられるかと。
人間として。親として。
キャンプ、ボロボロになった柵とプールの修理、高級車の試乗、そういった事を通して、子供と向き合っていきます。
彼が良い。ダメダメだけど、なんか、良い。
妻のサラが、彼にそろそろ働いて欲しいと願いつつもずっと応援してきたのも、エイダンの持つ、純粋さ、優しさ、ひたむきさ、ユーモア、愛情があるからなんだと思います。

そして、このサラがほんっとに良いのです。
エイダンや家族を見つめる表情と笑顔に深い深い愛と強さを感じて、涙してしまいます。
演じるケイト・ハドソン。年をとっても可愛らしく愛らしい‼好き♪

臨床試験治療をうけた偏屈な父も、それは、少しでも長生きして、子や孫とともにいたいのかなとか、そんな事を考えるとうるうるしてしまう。
電動ドリル大好きなやんちゃなタッカーもかわいいし、
思春期真っ只中のグレースも、純粋で自分を持っていていとおしい。家族への愛をしっかりと抱いているんです‼
敬虔なユダヤ教信者だった彼女の変化も面白い。
途中でどピンクのウィッグを被るんだけど、これがまた坊主もどちらもかわいい♪『Kick Ass』のヒットガール、クロエ・グレース・モレッツちゃんにしか見えないけどねw

ほのかなユーモラスシーンもたくさん♪
学校長のセグウェイとか、弟ノアのコミコン行進とか、ハメハメ宇宙ジュースとか、同僚の喋るあそことか…

そして、なんだか考えさせられる台詞がちりばめられています。
「意味のある人生を送ろうと奮闘しても、最後に待つのはこんな言葉だ。遺骨をどうするか」
「生きていると八方塞がりで階段を登れないこともある」
「命の終わりと向き合うのは何よりも辛いことだ。だが悲しみの先に学びがある」
「神を信じてないのは知ってるわ。でも、家族の事は信じて」
「これが人生か。時は流れるようにすぎていく」
などなど…こう書くと些細な台詞だけれど、それが絶妙に心に響きます。

途中、壁についての朗読があるのだけれど、
それは、心の壁を少しずつ壊していくような彼らと重なります。
また、プールを塗り直すことで、家族の絆を塗り直すような…そんな揶揄にも思えました。

なんというか、ガッツリな感動ものではありません。淡々と進んでいきます。
例えるなら、オチのないちいさな短編やエピソードが、細かく細かく重なりあって、でも、全てが繋がっている感じ。
前に出てきた些細な会話の内容なんかがきちんとあとからでてくるのです。細かく繋がって紡ぎあげられるのです。
それって、とても日常に近いのかも。
人生ってそんなものなのかなと感じました。
そうやって、人は生きていくのだと…紡ぎあわせていくのだと…
また、そうやってたくさんの思い出ができていくのだと……

また、映像が素晴らしく美しいのです…
夜の海岸で、向こうに見える遊園地の光
砂漠から見える夕焼け空の青とオレンジ
木漏れ日
海の波の煌めくうねり
時にスローモーションで、きらめきをじっくりと味あわせてくれます。

それに乗せられる音楽の良さ‼
この映画はエンドロール数曲までの全ての曲にきちんと字幕がついています。歌詞の内容まで、明確でないにしてもジンワリときます…
担当するのは、『(500)日のサマー』などのロブ・シモンセン。COLDPLAYとキャットパワーのコラボ曲もあります♪ このサントラ、欲しい‼

「子供の頃僕時はノアはヒーローになりきっていた。剣をもって世界を守りたいと張り切っていた。
でも、無理だったのかも。
僕らは結局普通の人間だった。
守られる側だった」
という台詞が最初と最後に出てきます。
最初と最後の感じかたの違い。
胸を打ちます。

みんな、誰かに守られて生きている。お互いに。
親でも子でも叔父でも姪でも孫でも祖父でも祖母でも妻でも夫でも。
私はこの家族が好きです。
そして、この映画が好きです。
MikiMickle

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